朝日新聞は6月1日に「入国後の待機者、1日300人が応答せず 粗い水際対策」と報じているが、応答のない人の中には筆者のように厚生労働省からの通知が届かない人も多数いるのではないかと考える。検疫に関するガイドラインには誓約違反をした際、検疫法に基づく停留措置としてネット上で氏名公表などを行うとうたっている。加藤勝信官房長官が1月14日の会見で「法律上の根拠がなくても(氏名公表は)許容され得る」と説明したが、国からの通知が届かない人に氏名公表の形で「罰則」を与えるようなことがあっていいのだろうか。
その上、移動の自由は憲法で保障されているため、国の要請を順守しない人が多いのも事実であろう。5月10日に開かれた参院予算委員会で立憲民主党の蓮舫氏が「(誓約書違反をし)連絡が取れなくなった人が体調が悪くなったのか、入院しているのか把握できていないことが市中感染につながるのではないか」と批判したように、筆者が体験した日本の「水際対策」は誓約書にサインをさせることだけを目的とし、その後のフォローアップをきちんと行わない無責任体制でしかない。
日本も、国内への変異ウイルス流入を防ぐためには1日も早く法整備を行い、諸外国のように入国・帰国者全員を14日間、政府または自己負担でホテルなどの政府指定検疫施設に強制隔離させるなど、より厳格な対策を講じるべきである。そうしなければ東京五輪・パラリンピックの開催中あるいは閉幕後に「五輪型変異ウイルス」誕生の不安が拭えない。
陣内真佐子(じんない・まさこ) 文筆家。1996年3月より家族とともにグアムに移住。グアム大学で3年半の学び直し生活を送った後、2000年にグリーンカード(米国永住権)を取得し、グアム政府観光局などに勤務。10年に取得したグアム政府公認ガイドの知識を生かし、15年から国内最大手の旅行情報誌のグアム特派員としてブログ活動や各種雑誌やウェブ記事の執筆や翻訳を手掛けている。海外書き人クラブ会員。
(2021年6月28日掲載)
新着
会員限定