最後となる8回目のチェックポイントでは、抗原定量検査結果の待合所内にあるカウンターでパスポートとQRコード、誓約書、健康カードに記入した入国後14日間の待機先または自宅住所と連絡先、空港からの移動手段の確認があった。しかし、口頭と筆記による自己申告だけで確認書類が求められることは一切なく、待機施設の予約票などを提示したが必要ないと言われ、見てももらえなかった。これでは、待機先が虚偽であっても確認のしようがない。
また、信じがたいことに、検疫ブース内の検疫官と、最初と最後のチェックポイントを除き、残り5カ所のチェックポイントで入国・帰国者への説明や書類チェックをしていた職員は、たどたどしい日本語しか話せず、日本人とは思えなかった。彼らの日本語能力を確認したわけではないが、書類確認が厳密にできているのか、とても不安に感じた。
抗原定量検査結果の待ち時間はその日のフライト状況によって前後すると説明があったが、筆者の場合は実にスムーズに進み、1時間ほどで陰性証明書を受け取った。予約したハイヤーの迎車時刻までかなりの時間があったため、当然あるはずと思って「一時隔離・待機場所」を検疫検査所のスタッフに尋ねたところ、そういった場所の用意はないので迎えの時間まで空港内で自由に過ごしてくださいと言われた。
グアムの場合、ワクチン未接種の人たちやワクチン接種完了後2週間以上経過(自己免疫が構築)していない人の場合は飛行機から降りた後、州兵監視の下、空港内の「待機場所」から隔離施設であるホテルへ強制的に連れていかれる。隔離先へのバスが来るまでの待ち時間中も、空港内での自由行動は許されていない。
グアムでは2回のワクチン接種が完了している証明書を所持している人は隔離措置を免除されるが、日本の入国審査ではそもそもワクチン接種の有無を確認していなかった。グアムの現状と比べても、日本が行っている「水際対策の防疫強化措置」が、ザルのように目の粗いものであることは明らかだ。
国内へのウイルス持ち込みを未然に防ぐための水際対策の最重要ポイントである検疫チェックで、たどたどしい日本語の対応を受けたことに私は大きな不安を感じたが、それ以上に14日間の待機期間中の宿泊施設や自宅、そこへ行くまでの(公共交通機関を使わない)交通手段もすべて自己申告だけで済ませ、確認もしないとは一体どういう了見なのだろう。また、PCR検査に比べ精度が低いとされる抗原定量検査で陰性結果が出たとは言え、感染している確率がゼロではない入国・帰国者に空港内での自由行動を許す行為そのものが、感染拡大につながる可能性が高いことを政府は認識しているのだろうか。
筆者はグアムで2回のワクチン接種を終え、自己免疫が構築されているとはいえ感染リスクがゼロではない。空港内でのお粗末な水際対策の実態を目の当たりにし、おびえながら陰性証明書とパスポートを手に入国審査の顔認証自動化ゲートを通り、手荷物受取所で荷物を引き取って税関で検査を受け、第1ターミナル外にあるベンチで迎えの車を待って東京都内に入った。
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