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これではウイルス侵入を防げない!日本の入国管理体験リポート

陣内真佐子(文筆家/グアム在住)

 東京五輪の開幕まで1カ月を切ったが、日本の菅義偉首相、東京都の小池百合子知事からは、国民の不安を払拭(ふっしょく)できるような大会期間中の新型コロナウイルス感染拡大防止対策について、いまだ具体的な説明は行われていない。五輪が開催されれば、多くの選手、関係者が来日し、専門家でなくても感染リスクが高まることぐらい分かる。厚生労働省の入国者健康確認センターは「『安心・安全な大会を実現する』という日本政府の方針に沿って、、日本に入国・帰国する人たちの水際対策の防疫強化措置を講じている」というが、いったいどのような水際対策が行われているのか詳しい情報は伝わってこない。そこで今回、居住地のグアムから6月8日に一時帰国し、約2週間の自主隔離生活を送った筆者が、「安心・安全な大会を実現する」という水際対策をリポートする。

グアム国際空港内コンコースエリアの人影はまばら

 まずは出発地であるグアム国際空港の様子からお知らせしよう。筆者がグアムを出発した前日、6月7日時点の島内新規感染者数は5人で累計が8215人と報告されており、アルファ株(英国型)などの変異ウイルス感染者が確認されてはいるものの、約71%の島民がワクチン接種を完了しているためか、大規模なパンデミックは起こっていない。グアム空港内のコンコースエリアにある免税店では、ワクチン接種のために来島した米国人旅行者が出発前に買い物をする姿は見られたものの、日本-グアム間を結ぶ国際線が成田発着の1日1便しか運航されていないことから、日本人旅行者は皆無に等しく、ターミナルはひっそりとしていた。

 筆者が利用したのはユナイテッド航空、午後12時10分グアム発の便で、定員120席の小型機の機内は、米疾病管理センター(CDC)のガイドラインに従い、静電スプレーや紫外線照射ライトによる機内消毒を出発前に行い、フライトの間は高性能HEPAフィルターを使用して空気を循環させるといった感染防止対策をしているとの説明があった。

 航空機としては十分な対策だと思えたが、それでも飲食時以外常時マスク着用のアナウンスが入った。搭乗率40%程度と空席が目立っていたが、万が一、感染者が出た際に濃厚接触者の確認を速やかに行うための措置として、断りなく勝手に席を移動しないよう指示があった。3時間弱の空の旅は快適で、温かい食事サービスはコロナ禍前と変わらぬ提供内容であったが、客室乗務員はマスクとエプロン、ゴム手袋を着用していた。

 予定より20分以上早い午後2時39分、日本に着陸後、モンゴルを筆頭にドバイ、ドーハ、ニューアーク、サンフランシスコと次々に国際線乗り継ぎ客へのアナウンスが入った。その30分ほどの間に当初50人ほどいた搭乗客は日本を最終目的地とする4人だけになり、そのうち2人は長崎県の米海軍佐世保基地に向かう人たちだった。

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