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次に目指すは日米3000安打 青木宣親、39歳の高い志

節目の2500安打も通過点

 プロ野球ヤクルトの青木宣親外野手(39)が節目の日米通算2500安打を達成した。米大リーグでの実績が必要なこの記録は過去に、4367安打のイチローをはじめ2643安打の松井秀喜、2705安打の松井稼頭央と3人しか到達していない。青木はヤクルトで2度のシーズン200安打以上を記録。首位打者を3度獲得するなど「安打製造機」として鳴らし、海を渡って米大リーグ7球団でプレー。2018年にヤクルトに戻ってからも安打を積み重ね、新たな勲章を手にした。ただし、これはあくまでも通過点。来年1月に40歳となるベテランの志は高い。視線の先に日本球界での通算2000安打、さらには日米通算3000安打がある。(時事通信運動部 峯岸弘行)

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 360度を見渡しながら、一塁ベース付近でヘルメットを取って丁寧に頭を下げる。スタンド、チームメート、相手チームからは祝福の温かい拍手。5月26日、本拠地神宮球場で行われた交流戦の日本ハム2回戦。青木が日米通算2500本目の安打を放った。

 ほっとした表情が印象的で、「やっと出たなという気持ち」。率直な感想だろう。誰よりも安打を量産してきた男は今季、思うような結果を残せずに悔しがる姿が目立っていた。「すごく幸せ。特別な日になった。やっぱり近づいてくるにつれて、始めは意識していなかったけど、本当に近くなってくると意識するもので。達成できてよかった」と頰を緩ませた。

濃厚接触者として隔離も

 昨季を終えて、日米通算2478安打。区切りまであと22本で、開幕すればあっという間にクリアできる数字と思われた。しかし、今年は自分ではコントロールできない状況があった。1月は自主トレーニングを共にした若き主砲、村上宗隆が新型コロナウイルス検査で陽性となり、好調のまま迎えた開幕直後にもチーム内でコロナ感染者が出た。青木はいずれも濃厚接触者に認定され、2週間の隔離を経験。4月16日にようやく戦列に復帰してからも、快音連発とはいかなかった。

 あと3本に迫った5月21日からのDeNA3連戦。その瞬間を共有しようと家族を球場に呼んだが、3試合で計2安打にとどまり、一歩届かなかった。試合のなかった月曜日を挟み、交流戦が始まった25日の日本ハム戦も無安打。「子どもの習い事を休ませてしまった。でも、安打はそう簡単に打てない」と苦笑い。長いプロ生活で多くの安打を放ってきた青木にあっても、改めて「一本」の安打を打つ難しさを実感していた。

 迎えた26日。1点を先制された直後の一回に山田哲人の3ランで逆転し、2死走者なしで6番の青木に打順が回ってきた。マウンドは左腕の加藤貴之。3ボールからの4球目、速球を振り抜いた。打球は一、二塁間を破って右前へ。待望の安打にファンは沸き、チームも勝利で大記録に花を添えた。

観戦した家族に感謝

 試合後、支えになってくれた家族の前で決められたことを喜び、「家族は一番近くで見ていて、自分がつらいとき、いつも寄り添ってくれた。特に奥さん。妻はいつもサポートしてくれた。子どもはやっぱり、一緒に触れ合ったりしていると本当に元気をもらえる。その時だけは、自分も父親の顔になる」。少し照れくさそうに、そう話した。

 故障による長期離脱がなかったことも、記録への近道になったと自己分析した。「けがをしなかったのが一番大きい。健康な状態でプレーをできるのはすごく重要。毎日、自分の体を見てくれる専属のトレーナーには本当に感謝している」と周囲への思いを口にした。

不振でも高津監督は全幅の信頼

 日本球界(NPB)での通算打率は5月終了時点で3割2分3厘。4000打数以上の選手では歴代トップに立つ。だが、2500安打達成直前の打率は2割台前半と振るわず、歯がゆい毎日を過ごしていた。アスリートにとって2週間の隔離は大きく、「コンディションがなかなか整わなかった。思うように体が動かなかった」と打ち明ける。

 それでも、ベンチでは仲間を鼓舞し続けた。高津臣吾監督は「凡退した後、ベンチで悔しがっている。本人はもちろん気分良くないでしょう。でも、バットで貢献できなくても、他でチームをまとめようとしている」。切り替えて声を出す姿を頼もしく見てきた。たとえ不振でもスタメンで起用し続けた指揮官は「外す気がないので、そのままにしていた」と笑い、「うちの中心選手。必ず状態は上がってくると思って使っていた」。全幅の信頼を寄せている。今季から主将の山田、4番を任されている村上ら後輩にとって、その背中は最高のお手本だ。

 ソフトバンクから加入した内川聖一も、青木に刺激を受けているという。セ、パ両リーグで首位打者に輝き、既に通算2000安打をクリアした38歳は「2500という段階になると、また別の世界。向上心をもってやり続けられるノリさんってすごい。自分の中でこうするんだというのをしっかり持って野球に取り組んでいる。あの姿にはすごく勉強させられる」。春季キャンプでは、内川が青木に打撃のアドバイスを求める場面もあった。

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