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戦後保守政治の裏側15 怒りなき社会の停滞 昭和の残滓との闘いはまだ終わっていない

昭和の暴君

 会社のハラスメント研修で「今の若い世代は忖度してまで役員になりたいと思っていない」という指摘があった。価値観が違うから、仕事に昭和世代のやり方で向き合うと、ハラスメントになる可能性があるという警鐘だ。【日本テレビ経済部長・菊池正史】

 昭和は戦争の時代であり、戦後も、その名残が強烈だった。敗戦という屈辱を味わった多くの日本人は、経済を戦場にして必死に働いた。企業戦士、エコノミックアニマル、モーレツ社員と呼ばれ、家庭も顧みず、滅私奉公して高度成長に貢献した。職場は戦場であり、厳しい指導は当たり前だったであろう。若手が失敗すれば怒鳴り、時には灰皿が宙を舞い、拳が飛んだという話もよく聞いた。

 私の世代は、ぎりぎり昭和の尻尾にくっついている。社会に出た時は、すでに平成の世だったが、1990年代には、まだまだ昭和的な上司や先輩の理不尽さもまかり通っていた。どこの部署にも、暴君と、その虎の威を借る狐が、一人や二人はいたものだ。暴君に限って、少しばかり仕事ができたりする場合もあるから、なおたちが悪い。会社も、教育という名目で、彼らの横暴や、陰湿ないじめを黙認していた。この空気感は、当時を知る世代なら、だれもが認めるところだろう。ハラスメントなぞという言葉は、まだ、ほとんど知られていなかった。

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