陸上のトラックシーズンが本格化している。短距離や跳躍の国内トップ選手は、春先までは主に室内大会に出場して、冬季練習の成果を試したり再調整したりする。室内では一般的に、トラック種目は障害を含め60メートルで争う。今年2月28日、鹿児島県大崎町で室内陸上競技会の「ジャパンアスリートゲームズin大崎」が初めて開かれ、通常なら屋外種目となる男女の100メートルと男子110メートル障害、女子100メートル障害も実施。会場の室内競技場が、国内最長の直線で150メートルもある短距離レーンを備えているから可能になった。この施設で冬季合宿に励んだ選手もいる。屋外、室内ともに、もともとトレーニングが主目的の競技場。大会の開催で知名度を高めながら、トップ選手から一般の町民まで幅広い層が活用する「陸上の聖地」に―。地元大崎町の担当者は、そう願っている。(時事通信鹿児島支局 丹治太郎)
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大会会場の「ジャパンアスリートトレーニングセンター大隅」は鹿児島県が運営し、2019年に一般利用ができるようになった。広大なスペースに屋外の400メートルトラック(8レーン)や投てき練習場のほか、傾斜走路や砂場走路などがある多目的グラウンド、トレーニング室も完備。同年には、5月に横浜市で開催された世界リレー大会に備えてトリニダード・トバゴの代表チームが事前合宿地として利用。男子1600メートルリレー優勝につながった。
冬季合宿のリピーターも
目を見張るのは短距離、走り幅跳び、棒高跳びなどができる室内競技場だ。150メートルの直走路は5レーン。冷暖房を含む設備面が充実していることが選手から高く評価され、冬季合宿のリピーターも多い。
鹿児島陸上競技協会などが主催したジャパンアスリートゲームズin大崎。男子110メートル障害はレースを2回行い、両方とも当時日本記録保持者の高山峻野(ゼンリン)が1位となった。高山は、この施設で約10日間の合宿に励み、仕上げとして大会に出場。男子棒高跳びを5メートル50で制した石川拓磨(TCS)は、冬季期間中には月に1度のペースで利用しているという。
山県、復帰戦Vから上昇カーブ
男子100メートルには復活を期す山県亮太(セイコー)が出場し、10秒39で優勝。10秒00の自己ベストを持つ実績十分のトップスプリンターは昨年、右膝を痛め、これが約半年ぶりの復帰戦だった。2002年に朝原宣治が欧州で出した室内日本最高タイム(10秒41)を上回り、「今後のモチベーションになる」と確かな手応えを口にした。
山県は4月29日、織田幹雄記念国際(エディオンスタジアム広島)の男子100メートルを制覇。桐生祥秀(日本生命)、小池祐貴、多田修平(ともに住友電工)のライバルたちに0秒1以上の差をつけ、10秒14(追い風0.1メートル)で快勝した。5月5日の水戸招待(ケーズデンキスタジアム水戸)では同種目で、4.7メートルという強い向かい風の中、10秒71で優勝。「壁を押しているよう」と苦笑いしながら「次につながるレースになった」。初戦の室内100メートルで得た好感触から、上昇カーブを描いている。
2012年ロンドン五輪、16年リオデジャネイロ五輪に出場し、リオ五輪の400メートルリレーでは銀メダルを獲得。3大会連続代表となる東京五輪を目指す28歳にとって、まずは有効期限内での五輪参加標準記録(10秒05)突破が最大のテーマだ。
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