日本アイスホッケー選手会が設立された。約2年前から有志が構想し、3月1日に発足。最高峰の北米アイスホッケーリーグ(NHL)で日本選手として初めてプレーし、アジアリーグの栃木日光アイスバックスに現在所属する38歳のGK福藤豊が初代会長に就いた。「今後、日本からアイスホッケーという競技、トップリーグがなくなってしまうのではないか」と危機感を募らせる。
長野五輪が開催された1998年以降の二十数年で、伝統のある実業団の企業チームが次々と撤退した。西武鉄道、コクドは統合を経て消滅。古河電工を皮切りに、日本製紙、王子製紙もクラブチームに転じた。東北、横浜に新チームが生まれたが、福藤は「企業チームがクラブ化しても、うまくいくとは限らない」と言う。新型コロナウイルスの影響で収入源がほぼ断たれ、追い打ちがかかる。
実力のある若い世代は近年、外向きになりつつある。全米大学体育協会(NCAA)1部の大学に進む日本の選手が増えてきた。技術やメンタルを鍛える養成機関として優れており、NHLもNCAA1部を経てプロに進むことを望むという。ある日本の関係者は「卒業後も北米などで挑戦を続けるはず。日本男子の今後の潮流はNCAA1部でプレーした選手がカギになる」とみる。
福藤は24歳でロサンゼルス・キングズからNHLデビューを遂げ、北米の下部リーグや欧州でプレーした経験もあるだけに「そういう選手はどんどん海外に出て、個人の実力を伸ばして活躍してほしい。僕自身もそうだった。代表もレベルアップできる」と語った。その一方で選手会長として焦りもあり、「ただ、僕たちが向き合わなくてはいけない問題がある」と言葉をつないだ。
最近、こんな声が聞こえてくるという。「大学生の中で、海外に行くレベルではないが、アジアリーグで十分できる選手が一般に就職したりしている」。アイスホッケー選手としての評価や報酬が低いことが背景にあると感じる。実業団では引退しても社員として残れたが、クラブチームでその保証はない。福藤は空洞化を恐れて、「まずはトップリーグの活性化が一番重要」と言う。
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