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コロナワクチン集団接種 国難でも希薄な危機感

渡りに船

 ファイザーの悩みは市場だ。世界最大の米国は既に飽和しており、米政府が確保しているワクチンは数億回分が余ると考えられている。4月15日にはブーラCEOが、ワクチンは接種後6~12カ月以内に3回目の、将来的には毎年の接種が必要になる可能性をぶち上げたが、そのためには臨床研究が必要で、現状ではどうなるか分からない。

 ファイザーが期待を寄せたのが、市場規模の大きい日本と中国だ。そこに菅首相からの申し出があったのだから「渡りに船」という見方も可能だ。

 中国の状況は日本以上に深刻だ。人口10万人当たり6万5444人と、米英を凌ぐ数のワクチン接種を達成している南米のチリで感染者が激増している。人口の65%がワクチンを接種しているのだから、集団免疫を獲得しているはずだ。なぜ、こうなるのだろう。

 注目すべきは、チリが使用しているワクチンの9割以上が中国シノバック製であることだ。チリ保健省は同社製ワクチンの予防効果を67%と報告しているが、現状と合わない。ここにきて中国製ワクチンの信頼が急落しているのだ。

 中国は国内での流行は抑制できているものの、海外との交流再開には有効なワクチンの確保が欠かせない。中国政府がファイザー製ワクチンを7月までに承認し、1億回分を輸入すると表明したのは、このような事情からだ。中国はファイザーにとって、貴重な顧客となった。

 話を日本に戻そう。欧米に遅れること半年、国際的ワクチン獲得競争に敗れた日本にも余ったワクチンが流入する。5月中旬には高齢者向けに1万6000箱が到着予定だ。1箱で975回接種が可能だから、1560万回分に相当する。

 これからの日本の課題は、大量に輸入されるコロナワクチンをいかに効率よく接種するかだ。冬場の本格的流行までに、英国のように国民の5割以上には接種したい。10月中に最低1回の接種を完了するには、毎日40万回の接種が必要だ。ところが、これは絶望的な数字だ。4月12日現在、医療従事者約480万人のうち、最低1回以上の接種を終えたのは112万人(24%)に過ぎないことがその証左だ。

 一般国民への集団接種は、医療従事者を対象とした接種よりハードルが高い。さらに、ワクチン接種の実施主体は市町村だが、彼らに集団接種の経験はない。知人の地方都市の担当者は「どうしていいか分からない」という。

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