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コロナワクチン集団接種 国難でも希薄な危機感

欧米で進む集団免疫獲得

 新型コロナウイルス(以下、コロナ)の感染が拡大し、3度目の緊急事態宣言が発令された。日本経済はさらに甚大なダメージを蒙(こうむ)るだろう。

 コロナを克服するには集団免疫を獲得するしかない。やるべきことは明白だ。コロナワクチンの接種を進めねばならない。ところが、これが難航している。本稿では、その背景をご紹介しよう。(NPO法人医療ガバナンス研究所 理事長・上昌広)

 ◇  ◇  ◇

 まずは現状だ。図1をご覧いただきたい。英オックスフォード大学が提供する「Our World in Data」から引用した4月22日現在の主要先進7カ国(G7)における1回でもワクチンを打った人の割合だ。日本は1.3%で、英国の40.6%にはもちろん、欧米でもっとも低いイタリアの19.5%にも劣る。

 図2は各国の新規感染者数(7日間移動平均)の推移だ。英米伊で感染者が減少し、日独加で増加している。ワクチン接種率が40%を超えた英米で感染者数が急速に減少しているのは興味深い。接種率19.5%で感染者が減っている伊を除けば、接種率が30%以下の国は新規感染者数が増え続けている。以上の事実は、この辺りに集団免疫の効果が表れ始める閾値があることを示唆する。

 ワクチンによる集団免疫獲得は、従来指摘されていた基本的戦略だ。先進国はワクチン接種を推し進めることに全力を挙げた。このあたり、日本とは対照的だ。

 まずは、ワクチン接種の開始時期だ。G7は早い順に、英が昨年12月8日、米加14日、独26日、仏伊27日だ。すべての国が12月中に接種を開始している。一方、日本は今年2月17日。英国から遅れること71日だ。

 遅れた理由は、「平時の審査」に拘(こだわ)ったからだ。つまり、治験を課したのだ。ファイザーは、日本国内で昨年10月20日から約160人を対象に治験を開始し、12月18日に厚生労働省に承認を申請している。田村憲久厚労大臣は、これを受け、「有効性、安全性をしっかり審査した上で」と見解を述べている。

 ファイザーは海外では、昨年4月23日にドイツで第1、第2相治験、7月27日には国際共同治験を始めている。知人の製薬企業社員は「日本が国際共同治験に参加すべく厚労省と調整をしている間に、治験はスタートしてしまった」という。この結果、日本は「ブリッジ試験」と称される対象者が数百人の小規模な治験を実施することになる。もちろん、この規模の治験で日本人に対する有効性や安全性が分かるわけではない。

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