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めど立たず言い出せず、ホストタウンの苦悩 五輪事前合宿

難しい感染対策、まだ増える中止

 東京五輪・パラリンピックの前に、全国各地で外国チームの事前合宿を計画している自治体が窮地に立たされている。新型コロナウイルス感染症のため、すでに断念した自治体は50を超え、さらに増えそうな見通しだ。選手の直前調整に大きな影響を及ぼし、政府や組織委員会が目論んだ全国的な参加意識が薄れる恐れもある。

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 5月19日にニュージーランド男子ホッケーの事前合宿取りやめを発表した滋賀県米原市は、協議の結果、感染リスク軽減が最も重要だとの共通理解に至ったと説明。平尾道雄市長は「選手と市民が直接交流できる貴重な機会だったが、感染が拡大する中では選手の安全・安心を確保するのは難しい」とコメントした。

 21日には岡山市が台湾とスペイン、千葉県山武市がスリランカの合宿中止を発表した。感染の広がりと、政府や組織委が五輪強行開催へ向けて自治体に求める感染対策を厳しくしたことが、受け入れを難しくしている。

 西日本の自治体の担当者も「5月中には中止を決断することになると思う」との見通しを明らかにした。同じ府県内の複数の自治体はどこも同様だという。

 「入国後の移動からして、専用車両を使うにしても乗り換えの際に一般客との接触を防ぐオペレーションをどうするか。人数が多いと、宿舎の1棟使用は何とかできたとしても、部屋食の対応や行動管理までは難しい。組織委が本番でできるかもどうか分からない『バブル』を、小さい町村で作るのは…」と語気を強めた。

 地元の強豪校と練習するために事前合宿を計画したが、直接交流ができなくなり、合宿の意味がなくなったケースもある。

 選手らに行う毎日の検査、陽性の場合の医療対応などは、地域内の今の情勢では「医療関係者に相談さえできる雰囲気ではない。もともと熱中症対策で協力を求めるのも決して簡単ではなかった」という。

 仙台市では複数のチームから見送りの意向を伝えられて協議中だが、郡和子市長は18日の定例記者会見で、五輪と事前合宿の実現に望みをつなぎつつ、医療資源の五輪優先確保については「その方々を優先してというふうなことは、私としてはどうなのかなと思う」と述べた。

 ただ、ホストタウンは自治体数で528、計画数では456件(4月27日現在)あり、事前合宿中止が決まった自治体はまだ1割強。理由の一つは協定の存在で、郡市長は「あちらからやめにしますということがあれば、はい、その通りですねとなるが、こちらから協定を破棄することはできないものと認識している」という。

 焦りながら状況を見ている自治体が多いようで、「相手側から言ってくれるのが一番いいが、やんわりと相談の連絡を入れても回答がない国がある」「県内で最初に中止とは言いづらい」などの声が聞かれる。

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