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オーガスタで優勝、世界を見据える梶谷翼 女子アマチュアゴルフ界注目の高校3年生

同郷の渋野日向子と「同じ舞台で」

 女子のアマチュアゴルフ界で、注目の逸材が快挙を成し遂げた。神戸市の滝川二高3年生で17歳の梶谷翼。松山英樹がマスターズ・トーナメントでアジア勢初の優勝を果たした日の8日前となる4月3日、梶谷は同じオーガスタ・ナショナルGC(米ジョージア州オーガスタ)で決勝ラウンドが行われたオーガスタ・ナショナル女子アマチュア選手権を制した。高校1年の時から日本ゴルフ協会が編成するナショナルチームのメンバーに選ばれ、将来を嘱望される存在だ。今年から日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)のプロテストを受けられるようになる。ただし、その視線は既に世界へと向いている。米ツアー参戦を目指して奮闘中の渋野日向子と同郷。大きな可能性を秘めた梶谷の夢は広がる。(時事通信運動部 前田祐貴)

◇ ◇ ◇

 オーガスタ・ナショナル女子アマは、女性への門戸開放の流れを受けて2019年に第1回大会を開催。昨年は新型コロナウイルスの影響で中止となり、今年が第2回となった。別のコースで2日間の予選ラウンドを行った後、上位30人がオーガスタ・ナショナルGCで行われる18ホールの決勝ラウンドに進む形式だ。第1回大会では、梶谷にとって高校の先輩となる安田祐香、笹生優花がともに3位に入った。

 岡山県出身の梶谷は、両親の勧めで7歳の時にゴルフを始めた。19年のAIG全英女子オープンを制した渋野を昨年末まで指導してきた青木翔コーチの門下生だ。そんな縁もあって、渋野については「アマチュアの頃から仲良くさせてもらっていた。いつの間にか遠い存在になってしまったので、自分が同じ舞台に立てるように頑張らないと」と話す。

プレーオフ突入に「やった」

 梶谷は帰国後の自主隔離を終えて記者会見し、栄光を振り返った。オーガスタでの決勝ラウンド。順調にスコアを伸ばしてきたが、終盤の17番でダブルボギーをたたいた。それでも、崩れそうな局面から立て直し、18番をパーでしのぐ。これで米国選手とのプレーオフに突入した。その瞬間から、優勝を意識したという。「18ホール以上回れて『やった』と思った。緊張もあったけど、みんなよりも多く回れるのがラッキーという感じ」

 プレーオフでは最初のホールをパーとして決着。日本勢初の優勝を遂げ、全米女子オープン(6月3~6日、米サンフランシスコ)とAIG全英女子オープン(8月19~22日、英カーヌスティ)の海外メジャー2大会への出場権を獲得した。2月に自動車事故に遭って療養中のタイガー・ウッズ(米国)もツイッターで「素晴らしいプレーオフでの勝利、おめでとう」と梶谷を祝福した。

けがを乗り越えて

 ここまでの道のりは順調ではなかった。オーガスタ・ナショナル女子アマには昨年に初めて出場する予定だったが、大会が新型コロナウイルスの影響で中止に。国内の大会だけでなく、ナショナルチームの一員として出場するはずだった国際大会も次々と取りやめとなり、モチベーションの維持に苦しんだ。

 追い打ちをかけたのが故障。昨年12月に左足首の靱帯(じんたい)を負傷し、約1カ月間クラブを握れなかった。「すぐ戻れるだろうと思っていたけど、初めてのけがだったので、どうしていいかもよく分からなかった。練習場に行っても、球には当たるけど全然飛ばないし、曲がってしまった」。ショットの感覚を取り戻すのに、時間がかかった。

 主催者推薦で出場した今年3月の国内ツアー、明治安田生命レディース・ヨコハマタイヤ(高知・土佐CC)は予選落ち。「結果としては悪かったけど、そこまで悪いゴルフではなかった。楽しく回れたところもあった」。そんな梶谷を、滝川二高ゴルフ部の角谷真吾監督は「だんだんと尻に火が付いて、闘争心が出てきた」とみた。渡米直前に高校の全国大会に出場して調子を上げ、オーガスタでの栄冠につながった。

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