東日本大震災発生から10年の節目を迎えた今年、「復興五輪」を掲げて今夏の開催を目指す東京五輪・パラリンピック。熱戦の火ぶたを切るソフトボールの会場がある福島市で、スポーツボランティア団体のNPO法人「うつくしまスポーツルーターズ」が草の根の活動を進めている。被災県でスポーツに携わる立場から、事務局長の斎藤道子さん(57)に話を聞いた。(時事通信運動部 山下昭人)
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≪ルーターズは2005年に設立され、現在の会員は約500人。サッカーやマラソン、スキーなど県内で開催された多くのスポーツ大会に関わってきた。斎藤さん自身も豊富な経験を持ち、東京五輪では大会組織委員会によるボランティア研修の講師などを任された。五輪期間中は、ソフトボールと野球の会場になる福島県営あづま球場でボランティアの一人として活動する予定だ。≫
―現在の五輪は(一般市民が)スポーツに関わりたい気持ちを必ずしも大事にしていないようにも映る。どう感じているか。
今は商業化し過ぎている。私たちに何かできることがあるんじゃないかと、いろんなトライをするんですよ。五輪に向かって小っちゃいことをやろうとしても、「東京2020」という言葉が入っていたら駄目だと。最もリスペクトされるのはスポンサー。言葉としては復興五輪だけど、実際にはなかなか福島の草の根から入り込む余地がない。復興五輪と言うなら、もっと福島の声を聞いてくれるのかな、という思いはあった。このイベント(五輪)に関しては厳しいんだろうなと思いました。
福島の暮らし、伝えるチャンス
―復興五輪の意義について思うことは。
私たちの仲間が(英国の放送局)BBCにインタビューされた。質問が「福島は大丈夫なのかい?」って。いきなり「福島」が出てきて、結構衝撃を受けた。こういうふうに海外の人は心配しているんだなと思ったけど、それはチャンスですよね。私たちだって原発が安全安心だと全然思っていないですけど、福島で暮らしている人はいて、決して悲しい顔や暗い顔をして生活しているわけじゃない。そこに暮らしがあるんだ、ということを伝えるにはこれほど大きくてみんなが注目するイベントは多分ないから、すごいチャンスだなと思ったし、それは変わらない。
―大会は復興に役立つと考えるか。
物理的な部分は役立つかと言われたらどうかなと思いますが、精神的な部分、福島の人たちをより元気にするとか。ラグビーのワールドカップも高揚感があったじゃないですか。こういう機会はお金の無駄遣いとかがあったとしても、結果的には必ず効果があると私は思っています。
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