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「大麻売買合法化」でグアムは復活できるのか

グアムの「大麻」事情

 グアムに大麻が初めて持ち込まれたのは1955年から75年にかけてのベトナム戦争時、島内に配属された米軍人たちによるものだとされている。しかし、大麻の使用はグアムにおいても長らく違法で、多発性硬化症などの難病疾患治療を行うための「医療大麻合法化法案」が2014年11月、グアム議会を通過したものの、当時のエディ・カルボ知事が法案への署名をかたくなに拒んだため法制化はされなかった。

 一方、現職のレオンゲレロ知事は大麻解禁に積極的だ。19年1月に知事に就任すると、同年4月には前述した嗜好用大麻の個人使用を認める法律が成立した。同法により、グアムでは21歳以上の成人が自分で使用するために最大6本の大麻株を自宅で栽培すること、1オンス(約28グラム)以下の嗜好用大麻や1/4オンス(約7グラム)以下の大麻抽出物を所持すること、学校区域や公園、ビーチを除く場所で使用することができるようになった。

 この法律でも個人の間を含めて大麻を譲渡譲受・売買することは認めていないが、島内で大麻が流通していないかと言えば、そうではない。米国のオンラインメディア「インターナショナル・ビジネス・タイムズ」が国連薬物犯罪事務所(UNODC)の世界薬物報告書のデータを引用して伝えた記事によると、グアムの15歳から64歳までの大麻使用率は18.4%と世界で3番目に高いからだ。パラオなどから密輸された大麻の売買が裏ビジネスとして成立しているのがグアムの実態だとされる。さらに、大麻の売買は摘発や逮捕はされるものの、可罰的違法性が認められないという理由から、実刑判決(罰金や懲役)が下されたことはグアムでは一度もない。

島内では意見対立も
 では、グアムの人たちは今回の「大麻売買合法化案」をどのように捉えているのだろうか。19年4月に成立した嗜好用大麻の個人使用を認める法律をグアム議会で起草したクリントン・リッジル上院議員 は「大麻がグアムのイメージに何らかの悪影響を与えるという考えは間違っており、大麻はアルコールよりもはるかに安全で、犯罪にはつながらない」と主張している。また、グアム大学のアイリーン・ヤマシタ博士 は「21歳以上の成人にしか大麻を販売しないという規制を、販売者や購入者が順守しないと考えること自体がおかしい」と語っている。

 一方、グアム政府観光局が独自で行った調査によると、大麻が売買合法化されれば、その負のイメージによって(日本などからの)修学旅行の100%、家族旅行の35~40%の市場を失う可能性が指摘されている。同局の副局長ジェリー・ペレス氏 は「その結果、観光業に携わる約6500人の島民が失職し、少なく見積もっても2億4300万ドル(約255億1500万円)の損失を招く恐れがある」と、危懼(きく)している。ただし、ペレス氏の上司である観光局長のカール・ギテレス氏 は「脆弱(ぜいじゃく)なグアムの経済を復興するためには嗜好用大麻の売り上げに課せられる15%の税収益など数十億ドル規模の経済効果を考慮に入れなければいけない」と力説し、観光当局の中でも意見の対立が生じている。

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