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「大麻売買合法化」でグアムは復活できるのか

陣内真佐子(文筆家/グアム在住)

 2021年1月配信の記事で、グアムでの新型コロナウイルス感染が落ち着きを見せ、島民を対象にした無料のワクチン接種が始まったことをお伝えした。第1陣のワクチン接種対象者に入っていた筆者が1月9日に1回目の接種を受けたことはリポートした通りだが、その後、2月6日に2回目の接種を受け、翌日早朝に38度の熱が出たものの、それ以外に重大な副反応が起きることはなく、現在に至っている。

 21年3月末現在、グアムでは接種対象者およそ10万人のうち、約3万人が2回目のワクチン接種を終えた。新型コロナウイルスの新規感染者数も3月は1日当たり1~5人程度になっている。20年8月14日に出されたパンデミック警戒令はレベルが4段階中3段階まで緩和され、市民生活はほぼ平常に戻りつつある。

 ただ、島内の感染状況が落ち着いたとは言っても、グアムの主要産業である観光ビジネスが復興したわけではない。グアムを訪れる観光客の大半を占める日本と韓国の感染状況はいまだ厳しく、両国とも海外旅行を再開できる見通しは立っていないからだ。島内のホテルやレストランが営業を再開しても、閑古鳥が鳴くばかりである。

知事が観光復興目的で「大麻売買合法化」を表明
 経済的な先行きが見えない中、21年3月8日、グアム準州のルー・レオンゲレロ知事が会見で、現在は禁止されている大麻の売買を合法化する考えを表明した。グアムでは既に、21歳以上の成人が嗜好(しこう)用大麻を使用することが法的に認められている。ただし、使用者が自分で大麻草を栽培することが前提で、個人の間での譲渡譲受を含め、売買はできないので、グアムにおける「大麻ビジネス」は表向き存在していない。売買が解禁されれば、島内の大麻ビジネスは一大産業になることは確実だ。

 この時期に大麻売買解禁を打ち出したのは、コロナ禍で打撃を受けた島内経済の復興を目的としている。レオンゲレロ知事は会見で、大麻売買合法化が実現したあかつきには、準州政府が得る収益のうちの5000万ドル(約52億5000万円、1ドル=105円で換算、以下同)を島の美化と文化財保護、道路の修復や整備に充て、観光の中心地であるタモン地区の復興に役立てることを約束すると述べた。

 20年12月にグアムの調査機関が公表した予測によると、大麻売買合法化後の初年度の売上額は約1億3300万ドル(139億6500万円)に上る。レオンゲレロ知事が島の公共投資に充てると表明した5000万ドルが何年かけて支出されるのかは不明だが、グアム政府が大麻の売買から相応の額の税収を期待していることは間違いない。

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