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渋野日向子、2021年の決断とスイング改造 米ツアー本格参戦へ地固め

2021年04月26日18時00分

再び長期海外遠征中

 女子プロゴルファーの渋野日向子が今、海外でのプレーに重点を置いている。渋野にとって2021年は、世界最高峰の米ツアー本格参戦に向け、足場を固める年だ。20年と同様に長期の海外遠征を敢行。技術面でもさらなる進化を目指し、新たな挑戦を続けている。(時事通信運動部 前田祐貴)

◇ ◇ ◇

 AIG全英女子オープンで日本勢42年ぶりの海外メジャー制覇を遂げた19年から一転、新型コロナウイルスの影響で始動が遅れた20年は苦しんだ。自身の初戦から3試合連続で予選落ちし、その後も目立った成績は残せなかった。12月のメジャー大会、全米女子オープンでは首位で最終ラウンドを迎えたものの、優勝争いの重圧に屈してスコアを落とし、2打差の4位。目に涙を浮かべながら、「この悔しい気持ちは米ツアーでしか晴らせない。絶対にここでまた戦いたい」。米ツアー本格参戦への意志を固めた。

師匠から「卒業」

 20年末には大きな決断を下した。3年以上にわたり指導を受けてきた青木翔コーチからの「卒業」だ。今年3月の国内ツアー初戦、ダイキン・オーキッド・レディース(沖縄)で渋野自身が明らかにし、「自分で考えてやれることはやりたいと思うようになった」と説明。「不安はかなりあるけど、決めたことはしっかりやり通していけたら」と決意を新たにした。

 青木コーチに師事したのは、17年に初めてプロテストに挑み、不合格となった後だ。「あの時に落ちたから青木さんに出会えた。青木さんの指導、人柄でここまで来られたんだなと思う。青木さんがいてくれなかったら今の自分はいないので、本当に感謝でしかない」。素直な思いを口にした。

随所に石川遼の影響

 心機一転して迎えた21年。「自分を知ること」を目標に掲げた。その理由は「今まで青木さんに頼ってきてしまっていた分、自分自身を自分で知ることがなかった」。19年の終盤からチームに加わった斎藤大介トレーナーによると、初戦までの約2カ月間は「パワーアップするというよりは、体の使い方を覚えるイメージ」でトレーニングを積んできたという。ゴルフの練習は、特定のコーチをつけずに取り組んできた。

 今年の渋野には、多くの変化が見られた。スイングはトップの位置が右肩よりも低くなり、左手首を手のひら側に折る動きを採り入れた。クラブセッティングも、従来は2本だったウエッジを46度、51度、54度、57度の4本入れるようになった。これらは全て、テレビ番組での共演がきっかけでオフに数回、練習を共にした石川遼の助言によるものだ。

スイング改造、「円のように」

 渋野はスイング改造の狙いについて「再現性の高いショットを打つため。その(低めの)トップができることで、左のミスが消える」と説明。「縦振りというよりは横振り。円を描くようなスイングを目指している」。ストロークに入る前は、バックスイングだけをしてトップの位置を確認するルーティンが加わった。これも石川おなじみの動作だ。

 4本のウエッジはパー5でのバーディーを増やすため。石川の「100ヤード以内の精度を上げるなら、ウエッジを増やす選択肢もある」という言葉を受けての変更だ。フルショットの距離が10ヤード刻みになることで、ピンを攻める際に力加減の幅を少なくできるメリットがある。

「新しい攻め方を実践」

 渋野はこれまで積極的に2オンを狙っていたが、柔軟思考に改めた。「刻んでも、100ヤード以内の練習をすることでバーディーチャンスにつけられることがある。攻めのゴルフからは遠ざかっているけど、新しい攻め方を実践している」。ダイキンの2日目には四つあるパー5で全てバーディーを奪うなど、成果は表れつつある。

 新たな取り組みは、米ツアー本格参戦を見据えてのもの。昨年の海外遠征で「今までの自分のいいところもあるかもしれないけど、プラスアルファでやっていかないと、もっと上のレベルにはなれない」と実感したという。「新しいことに挑戦することにネガティブな考えはない。楽しんでやっている」。あくまで前向きに、そう話す。

 正確性を求めるスイング改造の途上で、以前に比べ飛距離が落ちている可能性がある。第2戦の明治安田生命レディース・ヨコハマタイヤ(高知)の初日は、ともに同じ「黄金世代」で飛ばし屋の原英莉花、勝みなみと一緒にラウンド。ティーショットのランで2人に置いていかれる場面が目立っても、冷静だった。「2人が飛び過ぎていると捉え、欲を出さないように気を付けていた。飛距離を求めていくとスイングが崩れる可能性がある。まずはスイングをつくることから大事にしたい」

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