2021年の米大リーグが開幕を迎えた。エンゼルスの大谷翔平選手(26)は今季、本格的な「二刀流」の復活を目指す。キャンプでは3年ぶりに投打でフルメニューを消化。オープン戦で打率5割4分8厘をマークし、投げては渡米後最速の101.9マイル(約164キロ)を計測した。充実したキャンプ、オープン戦を過ごし「いい感じでシーズンにつなげることができると思う」と仕上がりに自信をにじませている。(時事通信ロサンゼルス特派員 安岡朋彦)
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メジャー1年目の18年は投打にわたる活躍で新人王に輝いた。ただし、右肘を痛めてシーズン途中から打者に専念。その後の2年は打者としての出場がほとんどで、まだシーズンを通して二刀流で活躍したことはない。
「2、3年間、そういう活躍ができなかったのは、期待されていただけに『ふがいないな』という気持ちはもちろんあった。頑張りたい」
二刀流を続ける上でも重要な1年となりそうな今季。オープン戦では打者で上々の仕上がりを見せていただけに、投手としてどれだけ活躍できるかがカギとなりそうだ。
圧巻の高打率と5本塁打
オープン戦での打撃は圧巻だった。調整に主眼を置きながらも、打席に立った13試合のうち12試合で安打を記録し、31打数17安打。高打率をキープしながら、05年の松井秀喜(ヤンキース)に並ぶ日本選手のオープン戦最多記録となる5本塁打を放った。
19年に手術を受けた左膝の状態が良くなり、軸足にしっかりと体重を乗せられている。実戦に入る前から手応えを感じているようだった。
「しっかり乗っていないと、どうしても飛距離を出しにいく時に体のひねりや上半身の回転で飛ばしたくなるので、率につながらない。しっかりと下半身で回れている時は、上半身が(自由に動かせる)フリーの状態になるので、その分率が残る可能性も高い」
言葉通りに、オープン戦では打ちまくった。初戦となった3月1日のホワイトソックス戦で幸先良く2安打を放つと、2日後のレンジャーズ戦では推定飛距離約143メートルの特大本塁打。高めの速球を捉えた打球は、中堅420フィート(約128メートル)のフィールドの高さ約9メートルのバックスクリーンを越えた。
この一打からも分かるように、中堅から逆方向の左翼へ大きな当たりを飛ばす大谷の持ち味は健在だ。3月15日のレッズ戦では左翼方向に2本塁打。翌16日には、昨季ア・リーグのサイ・ヤング賞(最優秀投手賞)に輝いたビーバーに、またもバックスクリーンを越える一発を見舞った。
注目集めた「1番・投手」
投手としての潜在能力の高さを改めて示したのは、投打同時出場のテストとして「1番・投手」で出場した3月21日のパドレス戦だった。
投手では異例の打順とあって、いつも以上に大きな注目が集まった試合。打席でプレーボールを迎えた大谷は、パドレスの先発、スネルのファーストストライクを中堅左へはじき返した。スネルはレイズ時代の2018年にア・リーグのサイ・ヤング賞を獲得した。そのスネルが高めに投げ込んだ力強い95マイル(約153キロ)の直球を、ヘルメットを飛ばしながらバットをすくい上げるように出して捉えた。
後続のフレッチャー、トラウトは連続三振。4番レンドンの遊ゴロで、大谷は二塁で封殺され攻守交代。その際のスライディングで左膝が汚れたユニホームのまま、一回のマウンドへ。それも珍しい光景だった。
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