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甲子園春夏連覇から3年、根尾昂と藤原恭大を追う 特訓と成長、試練の日々

甲子園を沸かせた世代トップ

 プロ野球中日の根尾昂(ねお・あきら)とロッテの藤原恭大(ふじわら・きょうた)。2018年、高校野球の第90回選抜大会と第100回全国選手権大会の両方で優勝し、甲子園春夏連覇を遂げた大阪桐蔭の中心選手として躍動したのが、この2人だ。根尾は投手、遊撃手などをこなし、藤原は走攻守がそろった中堅手。ともに18年夏の甲子園では3本塁打を放った。秋のドラフト会議で根尾は1位指名に4球団、藤原は同じく3球団が競合した。背番号は根尾が「7」、藤原は「2」。期待の大きさが表れていた。

 3年目の今季。そろって開幕1軍、開幕戦のスターティングメンバーに名を連ねた。キャンプ以降、壁に阻まれながらも、ひたむきに取り組んできた将来のスター候補を追った。(時事通信名古屋支社編集部 浅野光青、時事通信運動部 大戸琳太郎)

◇ ◇ ◇

 根尾は岐阜県出身で中学時代から投打の高いセンスが知られ、アルペンスキーでも全国レベルだった。大阪府出身の藤原はボーイズリーグの強豪「オール枚方ボーイズ」でプレー。大阪桐蔭では2人は2年生の春、ともに主力で選抜大会制覇に貢献した。それを含め4季連続で甲子園に出場して3度優勝。同世代トップの高校球児として存在感が際立っていた。

 プロ1年目。藤原はいきなり開幕スタメンに抜てきされ、内野安打も。華やかにデビューしたものの、6試合に出場後は2軍だった。根尾は故障で出遅れたこともあり、シーズン終盤に1軍の2試合に出場。2年目、藤原は10月になってチームの新型コロナウイルス感染者多発を受けて1軍に昇格。プロ1号、2号を先頭打者本塁打で飾るなど26試合出場で25安打、3本塁打、10打点、4盗塁をマークし、ソフトバンクとのクライマックスシリーズ(CS)にも出場した。根尾は9試合でプロ初安打を含む2安打。ここまでは藤原が一歩リードした格好だが、3年目はそれぞれ、たくましさが増した。

根尾◆立浪臨時コーチと特訓

 根尾は着実に進歩している。キャンプ、オープン戦を通じて1軍。プロ入り2年間は公式戦で通算2安打だったが、今季は4月終了時点で22試合に出場して11安打、プロ初打点を含む7打点。打率は1割6分7厘ながらも勝負強さがあり、本拠地バンテリンドームナゴヤでヒーローインタビューを受ける「お立ち台」に2度も上がった。

 沖縄県北谷町でのキャンプに、高い目標を掲げて臨んだ。不動の遊撃手とも言える京田陽太からレギュラーを奪う―。京田が課題とする打撃でアピールしようと、臨時コーチを務めた立浪和義さんに「弟子入り」した。同じ左打ちで通算2480安打をマークしたOBの指導を受けながら、早朝から日が暮れて暗くなるまで、みっちりと練習した。

外野手で開幕1軍つかみ取る

 初の対外試合となったDeNA戦で3安打。根尾は「取り組んできた成果がちょっとずつ出ている」と実感。立浪さんも「いかに自分で振れる体勢をつくるか、をテーマとしていた。昨年と違う始動の仕方が分かりだしてきたようだ」とうなずいた。

 キャンプの対外試合で3割を超える打率を残し、オープン戦も2割5分とまずまずの数字でフィニッシュ。力強く引っ張ったり、逆方向に打ち返したりと巧打が光り、遊撃のポジション奪取とまではいかないものの、外野手として初の開幕1軍をつかみ取った。与田剛監督も「チームにいい刺激となる存在になりつつある。昨年も春先はある程度我慢して起用したが結果が出ず、今年は期待に応えながら調子を上げてきた」と成長を認めた。

「次の打席で打つために準備」

 3月26日、広島との開幕戦(マツダスタジアム)。8番左翼で先発出場し、第1打席でプロ通算3安打目となる左前打を放った。31日の本拠地での巨人戦では、同点の二回無死二塁で中前に適時打。プロ初打点をマークした。これが決勝打となり、初めてお立ち台へ。「いいところで一本出て、よかった。応援のおかげで打てているので、もっと喜んでいただけるようにいっぱい打ちたい」。少々緊張した表情の根尾に、地元ファンから大きな拍手が送られた。

 4月7日のDeNA戦でもチームの全3得点に絡む活躍で、再びお立ち台に。連敗が4で止まった17日の広島戦では、1―0の七回に貴重な2点適時打を放つなど、数字以上の貢献度がある。勝負強さの理由を、本人は「打っても打たなくても、次の打席で打つためにしっかり準備することだけを考えている」と言う。一打席を一過性に捉えず、収穫や課題を探り、その後に生かす。「欲がなくなったら打てない」とも話す根尾ならではの深い探究心が、ここぞの一打を生んでいる。

 「とにかく、いい選手になってほしい。使っているのは僕なので、悪くても思い切ってやってくれれば」と与田監督。外野陣の争いは激しい。新外国人のマイク・ガーバーが4月28日に出場選手登録されて3番右翼。その試合でも根尾は8番左翼で出場し、適時打を放った。「競争は今に始まったことではない。引き続き、1打席打つことを考えたい。チャンスで回ることも多いので、僕が結果を出せばチームの勝利につながる」。一歩ずつ、階段を上っていく。

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