戦後保守政治の裏側14 なかにし礼氏の“しなやかな反骨” 戦争の記憶を刻み込む執念

「時流に流されないヒットメーカー」という矛盾

 なかにし氏との出会いは、2014年1月だった。私が当時、担当していたBS日テレ「深層NEWS」に出演をお願いしたのがきっかけだった。なかにし氏は2012年に食道がんと診断されたが、すっかり回復しているとのことだった。

 私は2011年に上梓された「歌謡曲から『昭和』を読む」を読んで刺激を受け、忘れ去られようとしている戦争の時代「昭和」を、存分に語ってほしいとお願いした。

 この著書では、「赤とんぼ」などの作曲で有名な山田耕筰らが、軍歌の制作に邁進したことが厳しく批判されている。

 「作詞家であれ作曲家であれ、作家というものはどんな場面にあっても、最高の作品をつくろうと力を尽くすものである。それ自体はもちろん悪いことではない。しかし、その結果、作家の卓抜な技によって煽り立てられて戦地に赴き、戦死したり苦難を強いられたりした若者が大勢いたことに、作家たちは罪の意識を感じなかったのだろうか」と。

 「深層NEWS」への初出演は2014年5月5日となった。なかにし氏は、この中で、「歌は世につれ、世は歌につれ」という言葉を引き合いに出して、こう語った。

 「歌は世につれ、だけでは、世という主人を持っているのと同じ。しかし、世は歌につれの情熱がない限り、歌を書いている意味はどこにあるんですか。時流に乗ってはいけない。自分が時流をつくるんだという意欲を持たないと、歌にパワーは伝わりませんよ」

 歌は「主人」を持ってはいけないと言う。国家という「主人」を持ち、軍国主義という「時流」に乗って、国民を煽り、洗脳し、多くの若者を鼓舞して死地に向かわせた軍歌への批判が重なる。

 一方で、「世」を主人にしてはいけない、「時流」に流されてはいけないという言葉には、歌謡曲のヒットメーカーとしての矛盾もはらむ。「世」をつかみ、「時流」に敏感であるからこそ、ヒット曲を生み出せるのではないのか。テレビ業界では、「何を伝えるべきか」という議論よりも、「求められる情報は何か」を素早くキャッチして「時流」に乗る敏感さが求められることは多々ある。

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