新型コロナウイルスの影響で苦境が続く東京・豊洲市場(江東区)と飲食店。先週号では、豊洲の高級魚介を少々意外な料理に活用する飲食店が出てきたことを紹介した。今週は、飲食店と連携したり自ら小売店を開業したりして自慢の高級魚の消費を増やそうという、豊洲仲卸の取り組みについて触れたい。(水産部長・川本大吾)
豊洲のマグロ仲卸「大花」は、取引先のすし店の営業を助けようと、今春に大胆なマグロの取引に打って出た。その取引先は、神奈川県や東京都内ですし店「祭ずし」など4店舗を展開する大商物産(本社・川崎市)。祭ずしでは3月下旬から、2000円(税込み)で国産天然クロマグロのにぎりずしを食べ放題にする企画を始めた。
新型コロナの感染拡大で年明けの2度目の緊急事態宣言以降、再び午後8時までの時短営業を余儀なくされたため、祭ずしの客数は減少して売り上げも再びダウンした。3月下旬にようやく宣言が解除されたことを受けて、大商物産は「これを機に、何とかおいしいマグロを安く、たくさん食べてもらって、新規の客を取り込む方法はないか」と模索した。
これに対し、同社へマグロを卸している大花は「コロナ禍で厳しい経営を続けるすし店を少しでも応援したい」と考え、豊洲で競り落とした高級マグロを採算度外視で納品することを決め、祭ずしでの破格の食べ放題企画が実現したという。
クロマグロずし100個以上食べた客も
食べ放題用のマグロは、日本漁船がはるか遠くアイルランド沖で漁獲した天然クロマグロ。冷凍ものだが豊洲でも一級品として扱われる上ものだ。大花は、豊洲で仕入れたこのマグロを週に数回、多い日で100キロを大商物産に卸した。
これを祭ずしでは、大トロや中トロ、赤身のシンプルなにぎりのほか、大トロでは「炙りゆず塩」、中トロでは、ポン酢やゆず塩をかけたにぎりのほか、軍艦巻きにして提供した。さらに、赤身は「漬け」にもして、同じマグロからさまざまなすしが楽しめるようにした。
大商物産によると通常、クロマグロは大トロなら1個580円、中トロ470円で提供しているため、2000円の食べ放題は大盤振る舞いだ。5個以上食べれば元が取れてしまう。食べ放題の制限時間は2時間で、これまで100個以上食べた客もいたというから、ずいぶんと得した勘定だ。
食べ放題は4月中旬まで実施され、大好評となった。大商物産の大城啓護副社長は「マグロ以外にも豊洲のおいしい魚介はたくさんあり、食べ放題のクロマグロ以外のネタもそれなりに食べてもらった。また、時機を見てこうしたインパクトのあるイベントをやってみたい」と話した。
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