会員限定記事会員限定記事

【地球コラム】ロシア軍演習で一触即発

キーワードはドローン

 ロシアとしては、軍事的にも、外交的にも、状況が変わったと考えているのだろう。特にトルコ製ドローンには警戒している様子で、対ウクライナ国境付近を含む南部軍管区での「軍事演習」には、対ドローン戦に有効とされる防空ミサイルシステム「トール」を投入した。

 実際、ウクライナはトルコ製の「バイラクタルTB2」を既に配備している。ロシアとの緊張が高まる3月下旬に、黒海上空で試験飛行を行い、4月に入ってからはドンバス地方近くにも飛ばした。先のナゴルノカラバフ紛争に際してトルコがアゼルバイジャンに供給した機種であり、負けたアルメニアの後ろ盾だったロシアが恐れるのも無理はない。

 なお、日本に駐在するウクライナのコルスンスキー大使は、ロシアによるクリミア半島(先住民族はトルコ系のクリミア・タタール人)併合時、駐トルコ大使として2国間関係強化に一役買った外交官だ。2020年11月の東京都内での記者会見で筆者の質問に対し、ドローン供給と共同開発を念頭に「軍事協力の継続・拡大を期待している」と語った。ナゴルノカラバフ紛争で「クリミア半島返還への希望がさらに強くなった」とも明らかにしており、ウクライナ側には「転機」と映ったようだ。

 対するロシア側は、軍事的対応に加え、情報戦にも余念がない。ウクライナ東部でプーチン政権の影響下にある親ロシア派は4月3日、「(ウクライナ軍のドローン攻撃で)5歳の男児が死亡、60歳代の祖母が負傷した」と主張。ロシアの政権系メディアはこぞって引用して伝えた。停戦監視に当たるOSCEによると、前日に爆発で男児が犠牲となったことは事実だが、ドローン攻撃説についてウクライナ軍は、親ロシア派による「挑発だ」と一蹴した。

 ドローンを運用しているとしても、軍事目標ではなく、住宅地を狙うというのは合理性に乏しい。ロシアの独立系メディアも「プロパガンダ」と見なしており、ノーバヤ・ガゼータ紙は「大規模衝突の口実になりかねなかった」と警鐘を鳴らした。

 国境付近にロシア軍が集結する中、ゼレンスキー大統領がウクライナへの支持を取り付けようと、バイデン大統領をはじめNATO加盟国首脳と電話や会談を重ねたことは先に述べた。この際、公表こそされないものの、各国首脳からは「ロシアの挑発に絶対乗ってはいけない」と口を酸っぱくして言われている可能性が高い。

◆地球コラム バックナンバー◆

地球コラム バックナンバー

新着

会員限定

ページの先頭へ
時事通信の商品・サービス ラインナップ