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【地球コラム】ロシア軍演習で一触即発

バイデン政権で情勢変化

 具体的にゼレンスキー大統領は、クリミア半島を取り戻すべく、国際世論を喚起してロシアに圧力をかけるため、関係国による首脳会議「クリミア・プラットフォーム」を提唱。8月23日の開催を目指し、バイデン大統領も招待している。

 ロシアによるクリミア半島併合から7年を迎えるに当たり、国際社会に呼び掛けたものだが、バイデン政権の発足が追い風となったのは明らかだろう。ロシアに甘いとされたトランプ前大統領は、実現こそしなかったが、米国が議長国だった2020年にプーチン大統領をG7サミットに招待したい考えを表明したほどだった。

 米政権が交代したことで、国際社会も「トランプ前」に戻った。G7は併合7年の節目である3月18日にロシアを非難する声明を発表。「ロシアはウクライナの主権と領土一体性を侵害し続けている」「クリミア半島はウクライナだ」と改めて確認した。

 ちなみに、バイデン大統領はその前日、3月17日放映のABCニュースのインタビューで、ロシアの反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏毒殺未遂事件に絡み、質問に答える形で「(プーチン大統領は人殺しだと)思う」と発言している。ウクライナ情勢と直接関係はないものの、プーチン政権の対米不信に拍車を掛ける結果となった。

 今回、対ウクライナ国境付近にロシア軍が集結して緊張が高まると、ゼレンスキー大統領は4月2日、バイデン大統領と電話会談。ロシアの脅威を前に、米国の「揺るぎない支援」という約束を取り付けた。NATO加盟国にも外遊し、ウクライナの加盟への意欲を触れ回った。プーチン大統領の思考からすれば、ウクライナと欧米から度重なる「挑発」があったわけだ。

 ウクライナが意を強くする背景には、同じ旧ソ連圏の係争地ナゴルノカラバフで2020年秋に戦闘が再燃し、トルコの支援を受けたアゼルバイジャンが親ロシアのアルメニアを破ったこともある。凍結された紛争という現状が、軍事的にであれ、外交的にであれ、変更可能であることを示したのだ。アゼルバイジャン勝利の「秘密兵器」となったのは、トルコが開発したドローン。実はウクライナは、トルコ製ドローンの調達を進め、自国製航空機エンジンを利用した共同開発にも着手している。

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