会員限定記事会員限定記事

【地球コラム】ロシア軍演習で一触即発

「凍結された紛争」

 今回、再び注目が集まっているウクライナ東部ドンバス地方は2014年以降、緊張と緩和が繰り返されてきた。より正確に言えば、政府軍と親ロシア派による戦闘と停戦の繰り返しであり、多かれ少なかれ紛争状態が約7年間も続いてきたと言える。旧ソ連圏で使われる「凍結された紛争」という用語がおおむね当てはまる地域だ。

 危機のそもそもの発端は2014年2月、ロシアが自国の影響圏と見なすウクライナで、親欧米政権が誕生したいわゆる「マイダン(広場)革命」だった。プーチン政権は、ウクライナが欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)への傾斜を強めるのをけん制すべく、演習や住民保護といった名目の下に軍事介入した。21世紀にもなって、当時は主要8カ国(G8)メンバーだったロシアが、力による現状変更を試みたのだ。

 まず、歴史的に激戦が繰り広げられてきた要衝であり、ロシア黒海艦隊が駐留するウクライナ南部クリミア半島で、ロシア系住民のデモをあおりつつ軍事的に制圧する「ハイブリッド戦争」を展開。お手盛りの住民投票を経て、3月までのわずか約1カ月でロシアへの「編入」を完了した。ロシアをG8から追放したG7をはじめ国際社会はこぞって非難し、ロシアの友好国である中国やベラルーシですら編入を承認しなかった。

 なお、ロシア国民がクリミア半島を帝政時代からの「固有の領土」と見なしていることもあって、プーチン大統領の支持率は一時的に8割に急上昇したが、欧米の制裁でロシア経済は疲弊。国民の高揚感は今や見る影もない。

 クリミア半島に続いて2014年春にプーチン政権が軍事介入したのが、ドンバス地方だった。こちらは公式見解としてロシア正規軍の投入を認めず、不安定な紛争地域をウクライナ領内に生み出すことで、永続的に親欧米派政権を揺さぶることを狙ったとみられている。事実上の「無血開城」だったクリミア半島とは異なり、ドンバス地方の双方の死者は1万3000人以上に上る。言語も宗教も近い東スラブ民族同士で殺し合った結果だった。

 2015年2月にドイツとフランスが仲介して4カ国首脳でミンスク停戦合意をまとめたが、東部を分離独立地域として固定化するアプローチが盛り込まれ、ウクライナでは「不平等条約」として不満がくすぶっていた。

◆地球コラム バックナンバー◆

地球コラム バックナンバー

新着

会員限定



ページの先頭へ
時事通信の商品・サービス ラインナップ