この春、ロシア軍が対ウクライナ国境付近に兵力10万人以上を集結させ、隣国との大規模な紛争にエスカレートする懸念が強まった。プーチン政権の表向きの説明は「軍事演習」だが、それを隠れみのに2014年にウクライナに軍事介入したことは記憶に新しい。国境付近でロシア軍のプレゼンスを高めて緊張状態に持ち込み、相手の先制攻撃を誘発して「反撃」に踏み切る戦術は、2008年のジョージア(グルジア)紛争で証明済みだ。
日本も人ごとではなく、先進7カ国(G7)外相は4月12日、ウクライナ情勢を「深く懸念する」としてロシアを批判する声明を出した。ロシア軍の規模は7年前のウクライナ危機後で最大に膨れ上がり、いわば「第2次ウクライナ危機」の様相を帯びた。バイデン米大統領が「唯一の競争相手」の中国に対処する中、その隙を突くようにロシアは独自の動きを見せている。プーチン大統領はなぜ今、緊張を高めたのか。その狙いは何なのか。(時事通信社・前モスクワ特派員 平岩貴比古)
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