そのアレフでは内紛が勃発している。死刑が執行された教祖には、妻との間に長女、次女、三女、四女、長男、次男の6人の子どもがいる。このうち2013年10月以降、かつて麻原が後継に指名した次男を教団の活動に復帰させることを画策した妻らに、「アーチャリー」と呼ばれ教団最高位の「正大師」の地位にあった三女らが反対して、幹部信者らが対立。意思決定機関である合同会議が三女に同調した信者らを除名処分にしたことなどから、これに反発し分派していったのが「山田らの集団」だった。
他方、四女だけは教団とも両親からも離れたいと、二人を相続人から外すよう横浜家裁に申し立て、2017年に認められている。
私はその四女のインタビュー記事を執筆、週刊誌に寄稿したところ、三女が名誉棄損に当たるとして私と四女を訴えてきた。3年前のことだ。記事に誤りや事実誤認があるのであれば、まずは掲載誌の編集部や出版社を通じて訂正と謝罪を求めるべきところを、いきなり筆者とその取材対象者に500万円を求める訴訟を起こしてきたのだ。
同じ時期に三女は、やはり四女のインタビューを放送したことでフジテレビとインタビュアーの安藤優子、それに四女を訴えている。三女の提訴はこれだけに限らない。もっとある。
被告となった法廷で私は、これは「スラップ」である、と述べた。自らの意に沿わない報道に対してどう喝的・報復的に訴訟を起こし、私を委縮させ、報道を封殺するために行われたものだ、と主張して。その判決が2月24日にあった。
原告三女の敗訴だった。判決の中で東京地裁はこう指摘している。
「原告は、麻原の三女であり、地下鉄サリン事件当時のオウム真理教においてアーチャリーというホーリーネームを有する正大師の地位にあった者であるところ、オウム事件が世界にも類を見ない凶悪な無差別大量殺人事件であったこと、原告が現在もアーチャリーとして教団関係のイベントに出席するなど、実名や顔を公表して活動していることを併せ考えれば、原告の現在の言動及び麻原に対する考え方は、オウム事件によって大きな影響を受けた社会にとって重大な関心事ということができるから、本件表現(記事の該当部分)は、公共の利益に関するものと認められる」
新着
会員限定