打つのか守るのか、何をしてくるのか―。日本卓球界に超異色の新星が現れた。今季Tリーグにデビューし、木下東京の張本智和、水谷隼らを相手に9勝を挙げたT.T彩たまの英田理志。「雑草」のような球歴もさることながら、既存の戦型に収まらないプレーは、画一化の傾向がある卓球界にあって、この競技の面白さと可能性を再認識させてくれる。
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27歳で初挑戦したTリーグで、卓球人生が一変した。「水谷選手や張本選手に勝った時はいろんな人から連絡をいただいて、Tリーグは動画でも見られるので、多くの人に応援してもらっていることを、今まで以上に感じました」。リモート画面の向こうから、朴とつな口調で語る声が聞こえてきた。
今季最後の試合は2月20日、木下東京戦。ラスト5番のビクトリーマッチ(1ゲーム)に起用され、張本に9-11で競り負けたが、前日は英田が3-0で勝ち、張本の連勝を12で止めている。張本は「まだ分が悪いと思っているので、次は5ゲームマッチでリベンジしたいと思います」と率直に話し、伝え聞いた英田は「そう言ってもらえるとうれしいけど、リベンジされないように、もっと成長したい」と謙虚に受け止めた。
張本に勝った試合は、「英田ワールド」だった。第1ゲーム7-8からサービスで得点すると、次はサービスからバック、フォア、フォアの連打で9-8とし、そのまま押し切る。
第2ゲームはカットが効き、焦る張本がミスを続けて11-1と圧倒。第3ゲームは英田に打ち急ぎのミスが出て2-7、4-9とされたがひるまずサービス、レシーブから仕掛けて逆転、ストレート勝ちした。
プロフィルには「右シェークのカットマン」とあるが、初めて見た人は、これがカットマン?と驚く。サービス力が高く、レシーブでもチキータを駆使して3球目、4球目から前で攻めまくる。そうかと思えばカットでミスを誘う。カットかと思わせてまた打つ。混乱する選手が続出した。
シングルスでリーグ最多の22試合に出て9勝13敗。5敗は1ゲーム勝負のビクトリーマッチなので、5ゲーム試合は勝ち越した。勝った相手は水谷、張本、琉球の宇田幸矢、戸上隼輔ら。彩たまの坂本竜介監督は「大満足。シーズン前は全く予想していなかった。コロナ禍で外国人選手が来られなくて『補強』したと言われるが、英田は『補強』じゃないんですよ」と強調する。何しろ「あいだ・さとし」と読める関係者やファンも少なかった。
■用語メモ■カットマンとは、台から下がってボールを上から切るように下回転を与えて返す打法を主体とする伝統的な戦型。粘りながら、球質やコースを変えてミスを誘う。機を見て攻撃もするが、ベースは守り。
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