卓球のTリーグが3季目を終えた。コロナ禍の苦しいシーズンだったが、中止された試合はなく、昨季は新型コロナウイルス感染症の影響で中止されたプレーオフ・ファイナルまで「完走」。新星の台頭、中堅・ベテランの踏ん張りなど今後につながる収穫が多かったが、4季目に向けて深まった課題もある。元名古屋コーチで、1季目から実況の解説者を務める渡辺理貴さんの評を聞きながら振り返った。
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2月末のファイナルは男女ともレギュラーシーズン2位のチームが制した。男子は琉球が涙の初優勝、女子は日本生命が3連覇。1位の特典がない一発勝負であり、白熱した試合内容といい、敗れた男子の木下東京、女子の木下神奈川も立派な戦いぶりだった。
個人では男子の彩たま・英田理志、女子の木下神奈川・木村香純の登場が大きな収穫だった。ともにTリーグ初参加。シングルスで英田はリーグ最多の22試合に出場して9勝13敗、木村は6勝3敗の成績を残した。
英田は27歳、右のカットマン。公立中・高から朝日大、実業団の信号器材を経てスウェーデンへ渡った球歴もさることながら、カットと攻撃をめまぐるしく使い分けるプレーは超異色だ。
カットマンにも攻撃力は不可欠だが、英田はサービス、レシーブからの速い仕掛けを交え、中陣からのバックドライブや前へ詰めてのカウンターも見舞う。バックサービスの使い手も今や希少だ。
渡辺さんは「センセーショナルだった。本当のオールラウンダー。カットするのか打ってくるのか、相手は距離感がつかめず、予測を外される場面を何度も見た。カットマンで両面裏ソフトも、今では世界中探してもいないでしょう」と驚く。
9勝は木下東京・水谷隼からの2勝を含め同・張本智和、琉球・宇田幸矢、同・戸上隼輔らが相手。英田は「日本代表選手に自分の卓球が通用したのが自信になった。サービスとドライブが通じて、カットでも得点できた」と振り返る。詳しい話は近く特集記事で紹介したい。
木村は専修大3年、右のドライブ型。日本生命との開幕戦で早田ひなにストレート勝ちすると、その後も平野美宇やユ・モンユ(シンガポール)らを倒した。ファイナルでは3番に起用されて早田を3-1で破り、大方が石川佳純と予想したビクトリーマッチも託された。1ゲーム勝負で今度は早田に10-12と惜敗したが、6-10から追いついた粘りは称賛に値する。
渡辺さんは「自分のプレー領域を頑なに守り、下がらない。相手に慣れる力が高いのではないか」とみる。ものおじせず劣勢でも自分を見失わず、「サービス力が高くて戦術転換がうまい」のも大きな武器だろう。
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