ラグビーのトップリーグ(TL)が2月20日に幕を開けた。1月に複数のチームで新型コロナウイルスの集団感染が発生したため、当初の予定から1カ月以上、5週間も遅れて開幕。直前に実施した全16チームの一斉検査では陽性者が出ず、第1節の8試合を無事に消化した。2019年ワールドカップ(W杯)日本大会で活躍した福岡堅樹(パナソニック)や新加入のニュージーランド(NZ)代表、ボーデン・バレット(サントリー)らが妙技を披露。待ちこがれていたファンを魅了した。22年から新リーグへの移行が決まっており、03年に始まったTLは今季が最後のシーズン。W杯日本大会が成功し、観客の大幅増が見込めた20年シーズンはコロナ禍で無念の途中打ち切りに。太田治チェアマンは「何としても日本のラグビーファンに試合を届けたい」と特別な思いを抱いて準備を進めていた。ようやくシーズンが滑り出し、TLの関係者は胸をなで下ろしている。(時事通信運動部 鈴木雄大)
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「いざ開幕」が迫っていた年明けに、つまずいてしまった。新型コロナの検査で6チーム、60人以上に陽性反応が出たことが判明。当初開幕の2日前、1月14日にTLは延期という苦渋の決断をせざるを得なかった。開幕日に東京・国立競技場で予定していた東芝―NTTコミュニケーションズのチケットは2万枚近く売れていただけに、関係者の落胆は大きかった。
昨年は大学ラグビーで集団感染が続いたため、TLの各チームも十分に警戒していた。それでも日本全国で感染が急拡大した時期。あるチームの強化責任者は「社員選手が多く、チームだけで管理しても限界があったのでは」とみる。TLは各チームが十分に調整できる時間を確保するため、開幕日を当初の予定から5週間後の2月20日に設定。検査の頻度を2週間に1度から週1度に増やし、体調を管理する専用アプリを配布するなど感染防止対策をさらに徹底した。政府の緊急事態宣言が出ている状況でもあり、選手はほとんど外食もせず、ストイックに調整を重ねてきたという。
1年ぶりの公式戦、盛況に
そうした努力もあり、陽性者ゼロで2月20日の開幕を迎えることができた。人数制限付きとはいえ観客も入り、選手も関係者も感慨深かったはずだ。神戸製鋼のデーブ・ディロン・ヘッドコーチは「隔離期間でも選手が孤立しないよう、オンラインでコミュニケーションを取り、練習してきた。間違いなく今までに経験したことのない状況だった」。19年W杯で日本代表の主将を務めた東芝のFWリーチマイケルは「無事にできてすごくうれしい。お客さんの前でよい試合ができてうれしい」と声を弾ませた。
約1年ぶりの公式戦は盛況だった。医師を目指し、今季限りでの引退を決めているパナソニックのWTB福岡はリコー戦にフル出場。1トライも決めてスタンドを沸かせた。試合後、自身のツイッターで順天堂大医学部に合格したと発表。関係者によると、福岡はスポーツ医学の指導陣が充実している順大を数年前から第一志望にしていた。パナソニックのロビー・ディーンズ監督は「試験を受けながらラグビーをプレーするのは並大抵なことではない。人間に限界がないことを証明してくれた」と称賛を惜しまない。
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