―森会長の辞任を求める声もある。
森会長は女性が進出してくるのは嫌なんだな、という思いをすごく感じた。そういう中で五輪を迎えると、他国の女性からも反感があると思うし、もちろん日本国内でもあると思う。ご自身でお辞めになることはないと思うので、周りの方々が進退について考えていただければ。今回の五輪は多様性がメインと言っても過言ではない。そこをしっかり考えていただけるようなフラットな方がリーダーに就いていただければうれしいと、個人的に思う。
―国際オリンピック委員会(IOC)は「問題が終わったと考えている」との声明を出した。政府は森会長の進退に関与しない方針を示し、JOCの山下泰裕会長は続投を支持した。
人ごとになっているのではないかとすごく感じる。組織委員会に全てを投げるのは違うのでないか。組織委の中で大きな改革がないといけないかなと思うけど、周りから少しずつ中央に力を与えて、渦を起こしていくことが必要。組織としての弱さ、権力に負けてしまうところが、日本はまだまだ遅れていると思われる一つのきっかけになりかねない。今がみんなで力を合わせて頑張る時なのでは。
―日本の多様性への理解や認識について、競技や日常生活の中でどのように感じているか。
私がラグビーを始める時、『母親が小さい子供を置いて長期間いなくなって、競技をすることの意味は何なのか』とある男性に言われた。女性進出や母親の社会復帰に関して、まだ『家に入っていろ』みたいな風潮があるんだとショックを受け、変えたいと思った。ラグビーをやる中で、セクシャリティーに関していろんな子がいることに触れた。人を好きになるという当たり前のことが、性別を挟んでまだまだ偏見の目で見られることが、すごくあるんだと思った。
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寺田 明日香(てらだ・あすか) 1990年1月14日生まれの31歳。札幌市出身。陸上女子100メートル障害で北海道・恵庭北高時代に全国高校総体3連覇。卒業後は北海道ハイテクACに所属し、09年世界選手権(ベルリン)代表。13年に一度引退して、結婚、出産を経て16年夏から7人制ラグビーに挑戦。この間、早大人間科学部のeスクールで学ぶ。19年に陸上に本格復帰し、同年9月に12秒97の日本新記録を樹立。その後の世界選手権(ドーハ)に10年ぶりに出場した。6歳の娘、果緒(かお)ちゃんの存在は競技の最大の原動力。パソナグループ所属。(2021年2月7日掲載)
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