東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が女性蔑視とも受け取られる発言をしたことに関して、陸上女子100メートル障害で12秒97の日本記録を持つ寺田明日香(31)=パソナグループ=が声を上げた。2013年に一度引退し、出産や7人制ラグビー転向を経て19年に陸上に本格復帰。東京五輪で活躍する姿を6歳のまな娘、果緒ちゃんに見せようと厳しいトレーニングと育児を両立するママアスリートだ。発言することに葛藤があったというが、五輪を目指す女性アスリートとして意見を発信するべきだと決意。5日夜にオンラインで取材に応じ、残念な思いや憤りをあらわにして、続投を支持する政府や日本オリンピック委員会(JOC)などの姿勢にも疑問を投げかけた。(時事通信運動部 青木貴紀)
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―森会長の発言をどう感じたか。
女性が理事に入ることに対して、実力ではなく無理やり入れる感じで受け取られているのはすごく悲しいと感じる。女性理事を増やしていく世界的な動きにも反していると思った。森会長自身が、男性社会が当たり前だという風に思われているのではないか。女性アスリートとしては残念だなと思った。何でそういう考えになってしまうのかな、と不思議な気持ち。怒り、憤りみたいなものもある。
逆風の懸念、「すごく残念」
―寺田選手の周囲の反応はどうだったか。
知り合いのサッカー選手は、『女性だけ』のようなくくりをされることに怒っていた。多くの方が怒りとあきれるという感じだった。
―新型コロナウイルスの影響で五輪開催を不安視する声が広がる中、森会長の発言がさらに逆風を強める懸念はあるか。
もちろんある。いろんな選手が(開催は)難しいと思っていても、一つの望み、光を目指して頑張っている中、トップの方が世界から反感を買うような言葉を発してしまうことで、日本の五輪は本当に大丈夫なのか、日本の多様性についての考え方はどういうものなんだろうと思われてしまう。選手の頑張りや、(五輪開催に向けて)ご尽力してくださる方の努力が見えなくなってしまっているのはすごく残念。
―意見を発信しようと決めた理由は。
選手からすると五輪に関する問題などは正直、発言しにくい。ただ、女性として、ママアスリートとしてやっている以上、五輪は自分に関わること。せっかく女性進出が進んでいる一方で、まだセクシャリティーやジェンダーの多様性について日本は世界の中で後進国とされる。今回の森会長の発言で選手や五輪がそういう風に見られるのは悲しい。若い選手が言うのはなかなか難しいので、ベテランである私たちが発信するべきだと思った。
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