さて2021年に開催できないのであれば「再度の延期」を考えてみてはどうだろうという声も上がっている。
「英国の元五輪選手が、戦時中に3回五輪が開催されなかった例を引き、中途半端に延期しコロナ再燃のリスクを背負うのではなく『20年大会はコロナのため中止』とし、東京を24年の正式開催国にするべきだ(よってパリは28年、ロサンゼルスは32年開催に)と訴えています。たくさんの五輪選手がこれに賛同しています」(英国在住 冨久岡ナヲ)
「開催を強行しても観客は日本人だけになるので、席が余る可能性があるし、ホテルもいっぱいにはならない。それならその分をコロナ対策(特に医療関係)に充てるべきではないだろうか。IOCと交渉して32年の権利を確定してから「延期」するのがベストではないか」(米国在住 匿名希望)
最後に私の個人的な意見で、まとめにしたい。
結局は「今、何を大切にすべきか」だと思う。
スポーツをする楽しさもスポーツを観戦する喜びも大切だ。ストレス解消にもなる。だが、今五輪がどうしても必要かと言われたら、私は否定せざるを得ない。無理に世界中から人を集める必要はなく、国内の試合などでも十分楽しめる。もちろん五輪の方がレベルの高い競技が多いが、多少のレベルの低さは我慢できる。今は。
スポーツの選手寿命は短いから、次回のパリ大会にはピークを過ぎてしまっている人もいるだろう。そういう人たちは本当に気の毒だとは思う。
だが今は「選手たちが最高の舞台でスポーツをする喜び」よりも、大切にしなければいけないものがある。
ギリギリの状態でがんばってくれている医療関係者たち。
コロナ不況に陥っている飲食業関係者や旅行関係者たち。コロナで仕事を失った人たち。
そして何よりも地球上にいる一つひとつの命を少しでも救うことの方が、五輪の開催よりも大切だと私は思う。そして困った人を救うことこそが、本当の政治だと信じる。
柳沢有紀夫(やなぎさわ・ゆきお) 文筆家。世界100カ国300人以上のメンバーを誇る現地在住日本人ライター集団「海外書き人クラブ」の創設者兼お世話係。『値段から世界が見える!』(朝日新書)、『ニッポン人はホントに「世界の嫌われ者」なのか?』(新潮文庫)、『日本語でどづぞ』(中経の文庫)、『世界ノ怖イ話』(角川つばさ文庫)など同会のメンバーの協力を仰いだ著作も多数。オーストラリア・ブリスベン在住。
(2021年2月24日掲載)
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