ノルディックスキーの世界一を決める2年に1度の世界選手権。2月23日にドイツのオーベルストドルフで開幕するが、2019年2~3月にオーストリアのゼーフェルトで開催された前回大会の期間中、ドーピング問題が影を落とした。司法当局が、大会に参加していた複数の選手らをドーピングに関与したとして拘束。衝撃が走った。この問題で選手への「指南役」となったドイツ人の医師が今年1月、有罪判決を受けた。
ドイツにおける「近年最大のドーピング裁判」とも言われている。判決があったのは1月15日。ミュンヘンの裁判所だった。ロイター通信などによると、血液ドーピングを主導したなどの罪で医師の「マーク・S」に禁錮4年10カ月が言い渡された。罰金15万8000ユーロに加え、3年間の医業停止も。少なくとも8カ国の選手、計23人に指南したとされている。
反ドーピング法に基づく
マーク・Sは19年2月27日、診療所のあるドイツのエアフルトで身柄を拘束された。ドイツとオーストリアの司法当局は、その名も「瀉血(しゃけつ=静脈から血液を抜き取る治療法)作戦」という合同捜査を実施。同じ日、ノルディック世界選手権の開催地ゼーフェルトで、医師の助手や地元オーストリアの距離選手ら複数の選手が拘束された。
この大がかりな捜査は、ドイツで15年12月に成立した「スポーツにおけるドーピング対策法」(反ドーピング法)に基づく。それまでドーピングをめぐる制裁は、05年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)で採択された「スポーツにおけるドーピング防止に関する国際規約」の範囲内だった。反ドーピング法により、従来は罪に問われることがないに等しかった選手本人を含む違反者が、刑事責任を問われる対象となった。
「不正への警鐘となる」
中部ドイツ放送局(MDR)によれば、マーク・Sは法廷で「スポーツを愛するがゆえだった。ドーピングはスポーツにつきもの。医師の権威でスポーツ選手の助けになりたかった」と供述した。この言い分が一蹴される形の重い判決について、ドイツ・アンチ・ドーピング機構の役員で最高法務責任者のラース・モルトジーファー氏は「不正への警鐘となる。今後の反トーピング運動に与える影響は大きい」と述べた。
マーク・Sが主導したのは「自己輸血」による血液ドーピング。競技会の数カ月前、選手の血液を採取して凍結保存し、本番直前に当該選手の体内に戻すことで、血中ヘモグロビン濃度を高めて持久力を向上させる。最近では試合後の血液検査など対抗策もあるが、もともと自分の血液だけにドーピング検査で検知するのは困難とされている。
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