米大リーグ、エンゼルスの大谷翔平選手(26)が米アリゾナ州テンピで2月17日に始まったバッテリー組のキャンプに参加し、メジャー4年目となる2021年のシーズンに向けて本格的なスタートを切った。これに先立ち、エンゼルスは8日、大谷と2年総額850万ドル(約8億9000万円)=21年が300万ドル、22年が550万ドル=で合意したと発表。大谷は「いい話ができたと思う。本当に野球を頑張るだけ」と決意。充実したオフを過ごし、右肘や左膝の手術後のリハビリに重きを置いた過去2年のキャンプに比べると、コンディションを十分に整えてきた様子だ。今季は投手としての完全復活と、シーズンを通しての「二刀流」での活躍に期待がかかる。
新型コロナウイルス感染予防のため少人数のグループに分けられたキャンプでは、主力先発投手の組に入った。2日目の18日にブルペンで27球。最速90マイル(約145キロ)と球速こそ抑え気味だったものの、しっかりと腕を振り、18年秋に手術を受けた右肘や昨年痛めた前腕の不安を感じさせなかった。その日の練習後、今年初のオンライン取材に応じ「(投球練習は)オフもずっとやっていた。いい感じ」。調整に制約があった1年前とは異なり、好感触を得ているようだ。(時事通信ロサンゼルス特派員 安岡朋彦)
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振り返れば、メジャー移籍後のオフは2年続けてリハビリに追われていた。ア・リーグ新人王に輝いた1年目の18年は秋に右肘の内側側副靱帯(じんたい)再建手術、19年には左膝の手術を受けた。
体重減だった20年キャンプ
「トレーニングができないので、体調の維持だったり、体重の維持だったりが難しかった。特に去年はウエート(体重)が落ちていた」
1年前、20年のキャンプでは鍛え上げられた上半身が何かと注目を集めた。その一方で下半身の強化が満足にできていなかったため、実は例年に比べると体重が軽く、コンディションは整えられていなかったのだという。
シーズン中も、投手としてはいわばリハビリの途上。しかも手術後に満足な調整登板を重ねることができず、ぶっつけ本番でメジャーのマウンドに上がった。打者としても、術後の左膝の状態が十分ではなかったことから、本来の打撃は鳴りを潜めた。
オフから充実、体調も良好
大谷は20年のオフに入った11月に「(21年は)自分が納得した形で、いい状態で打席に入りたいし、マウンドに上がりたい」と語った。言葉を裏返せば、20年はそれができなかったという現実を示す。同時に、久々にリハビリから開放されて「充実した練習ができている」と話していた。そしてキャンプイン。オフの取り組みについて問われると、こう答えた。
「トレーニングもそうだし、投げたり打ったりの技術練習もそう。あとは食べる物とか、食事面も。血液を採って(検査し)自分に合っている食べ物、合っていない食べ物、炎症の起きやすい物、起きにくい物を調べた。同じ栄養素を摂るにしても、自分に合っている物の方がいい。そういう細かいところは、いろいろ(専門家に)聞きながらやった」
体重は18年や19年と同程度の102キロほどまで戻して、今キャンプに臨んでいる。2月17日のオンライン会見では「体調はいい」と何度か口にした。右肘も左膝も、右前腕も問題はなさそうだ。
術後2年4カ月、「なじんできた」
大谷は18年10月1日に右肘の手術を受けた。「トミー・ジョン手術」とも呼ばれるこの外科治療は、ダメージを受けた靱帯を除去し、体の別部分から採取したけんを移植して人工的に関節を再建する。術後の投球で肘に違和感が出るのは自明の理で、一般的には復帰まで1年以上を要する上に、本来の投球を取り戻すにはさらに時間がかかるとされている。
昨年は2シーズンぶりに投手として復帰。しかし、右前腕を痛めたこともあり2試合の登板にとどまった。1試合目は1死も奪えず降板し、5失点と散々だった。右手のけんを肘に移植した手術から2年4カ月以上が経過し、今年のキャンプを迎えた。本人の言葉に、手応えの良さがにじみ出ている。
「投げることの心地よさは高まってきている。(けんが肘に)なじんできたという感覚が去年より強い。自分の体になってきている感覚は、去年よりもかなりある。投球モーションに関しても、去年よりいいものがある」
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