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【地球コラム】議会突入と「嘆かわしい集団」~癒やしがたい米国の分断~

「トランプ最後の汚辱」

 1月6日の米連邦議会議事堂突入事件は、トランプ政権の「エンドゲーム」(大詰め)局面を画するもので、20日のジョー・バイデン大統領就任式に向け、議会での弾劾や憲法修正第25条援用、全米でのトランプ支持者によるデモなどさまざま動きが錯綜(さくそう)している。本稿では、アメリカの伝統的なプリント・メディア(新聞・雑誌)が形成する「アメリカの論調」と、あくまでドナルド・トランプの視点で「不正」を訴えて大統領選挙の合法性を拒否し、暴力を行使してでも結果を覆すのをいとわない、有権者の25~30%を占めるとみられる「嘆かわしい人々の集団」(basket of deplorables)の乖離(かいり)が象徴する、癒やしがたいアメリカの分断の現状を探ってみたい。(在米ジャーナリスト 佐藤成文)

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 昨年12月の当コラムで、今回の大統領選挙で、全米各地の日刊紙がトランプ、バイデン両候補のいずれを支持・支援するかを明らかにする「Endorsement」に触れ、民主党候補のバイデン支持を社説で表明したのが100紙超であるのに対して、共和党のトランプ支持は十数紙にとどまったと記した。そして今回の議会突入事件で、これら各紙の反応を調べたところ、当然のことながら圧倒的多数の新聞がトランプの扇動による暴徒の議会乱入だったという社説を掲載、即時退陣すべきだ、あるいは弾劾すべきだという論調だった。

 例えば、アメリカで最大の発行部数を誇るUSAトゥデーは1月7日付の社説で、「憲法修正25条を行使せよ―ドナルド・トランプは大統領職にとどまる道徳的権威を喪失した」との見出しで、「トランプは集まった支持者を扇動、議会へ送り込んだ」と指摘、もはやアメリカの指導者として不適格であり、修正25条を援用して解任すべきだと主張した。また同日付のニューヨーク・タイムズは「トランプ氏は議事堂への攻撃(attack)で責任あり」との見出しで、「大統領は支持者を暴力行為に扇動した。その結果に責任を負うべきだ」と強調した。

 ワシントン・ポストも「トランプ氏の最後の汚辱(disgrace)」と題する社説で「同氏は脅威であり、ホワイトハウスにとどまる限りアメリカは危機に直面する」として、マイク・ペンス副大統領が修正25条を援用してトランプを解任し、自らが1月20日まで大統領代行となるべきだとの主張を展開した。

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