進むも退くも、五輪が陥る矛盾と危機(上)

政治主導で狭めた選択肢

 世界的に新型コロナウイルスの脅威が続く中、東京五輪・パラリンピックの開催をめぐり、さまざまな情報や議論が飛び交っている。中止か無観客開催か、あるいは…。決断の前と後に、五輪とスポーツ界はかつてないほど大きく根源的な試練にさらされる。何が問われ、何が見えてきそうか。一橋大・坂上康博教授(スポーツ社会学)とともに考えた。(時事通信社・若林哲治)

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 ―緊急事態宣言の発出後から中止論が出始め、一方で国際オリンピック委員会(IOC)や政府、組織委員会は表向き、強気を崩していません。昨年は否定的だった無観客開催の可能性も公然と語られています。この状況をどう見ますか。

 坂上氏「いろんなことが予想されるが、中止もあり得ることが昨年よりかなり濃厚に出て来た。昨年3月に1年延期の選択をしたために、再延期の選択肢がない状況に追い込まれ、中止が現実味を帯びる中でIOC、日本政府、組織委がお互いに最もダメージが少ない形の決着を探っているところかなと。中止なら今回はIOCが決断し、日本政府や組織委からは言い出さないと思いますね」

 ―実は政府のトーンも変わっています。

 「昨年1月の国会では、安倍晋三首相(当時)の施政方針演説で五輪を初めに持って来て、1964年東京五輪後の経済成長と現在の経済再生とを引っ掛けてもう一度あの感動を、とぶち上げた。それが10月の菅義偉首相の所信表明演説では8番目の『外交・安全保障』の一部になり、さらにこの1月の施政方針演説では最後の『その他』。ものすごいトーンダウンですよ。各種世論調査でも国民のほぼ3分の1が再延期、3分の1が中止を求めている。政府はそうしたムードの中で、今はおとなしくしているように見える。組織委はただとにかく開催前提に全力でやっていますと…」

 ―反対論が増えた分は、五輪やスポーツが憎いのではなく政府・行政への不信の反映でしょう。再延期を望む人も今夏の開催に反対の点では同じ。

 「もともと、今何に金を使うべきかと聞けば、五輪は第一にならない。東京大会の招致当時は震災復興が一番。それを押し切ってここまで来たが、今はコロナ対策。人命尊重が切実な状況だから反対論は当然です」

 ―当然、2年延期の方が収束に近づく可能性は高い。選手は一段と大変ですが、中止になれば元も子もないのに1年にした。安倍前首相の任期を考えて花道にするために。

 「IOCのトーマス・バッハ会長も後で、完全に安倍前首相主導だったと言っています」

 ―今から再延期はできない点ではIOC、政府、組織委とも一致しています。

 「自ら選択肢を狭めたわけですから、開催するなら無観客にせざるを得ないとの判断はあり得ます。その場合の根拠は科学ですが」

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