2020年東京五輪での飛行が検討されている航空自衛隊の曲技飛行チーム、ブルーインパルスが、使用を中止している「カラースモーク」の試験を行うことが8月23日、防衛省への取材で分かった。ブルーインパルスは1964年の東京五輪開会式で、青空に5色のスモークで五輪マークを描いたことで知られる。天候などの条件がそろえば今月中にも、所属する松島基地(宮城県)で実際の機体を使って試験する方針。
カラースモークの使用は地上に影響が出たことで99年から中止されているが、空自は20年大会に向け改良を続けてきた。来年7月の開会式は夜に開かれるため飛行は行われないが、開会式前や聖火の到着式典などで、大空の五輪が56年ぶりに再現される可能性がある。
カラースモークは、機体のエンジン排気口に付けたノズルから粉末の染料を混ぜたオイルを噴射し、熱で気化させることで煙を出す仕組み。
防衛省によると、カラースモークを使った初飛行は61年。その後、五輪など多くの曲技飛行で使用されたが、98年に千歳基地(北海道)などの航空祭で高度100メートルの低空飛行をした際、周辺の車両に青や赤の斑点状の染みが付着したため、翌年から使用をやめていた。
空自は、20年大会の開催が決まった13年から研究を進め、染料の粒子を従来の半分の25マイクロメートル以下に改良した。高度1500メートルで飛行する場合、染料は大気中に拡散され、地表に下りても視認できなくなる。
環境や人体に対する安全性も既に確認している。松島基地での機体を使った実験では、スモークの見え方や拡散状況を検証する。(了)(2019.8.23)
◇聖火到着、5色のスモークで歓迎
東京五輪の聖火が3月20日、ギリシャから特別輸送機で運ばれ、宮城県の航空自衛隊松島基地に降り立った。聖火到着式では松島基地所属の曲技飛行チーム、ブルーインパルスが5色のカラースモークを使って飛行し歓迎。新型コロナウイルスの影響で式典の規模は縮小されたが、基地周辺にはまたとない瞬間に立ち会おうと多くの人が集まり、歓声を上げて空に手を振った。
特別輸送機は、強風の影響で予定を1時間半早めて到着した。式典では、五輪3連覇を果たしたレスリング女子の吉田沙保里さんらがトーチを掲げ、聖火皿に点火した。
基地上空では、ブルーインパルスが展示飛行を行った。1964年東京大会の開会式と同様、5色の煙で五輪マークを描こうと挑戦。強風で形が流されてしまったが、横一列に並んで5色の直線を描き、聖火到着を祝った。
飛行を見守っていた宮城県名取市のパート職員柿崎豊さん(68)は「記念の到着式を見たいと思って来た。強風で五輪マークにはならず残念だが、感激した」と興奮した様子。仙台市の小学4年生三戸理乎さん(10)は「カラースモークを見るのは初めて。迫力がすごかった」と喜んだ。
基地近くのゴルフ場では、地元有志約40人が地面にカラーボードで五輪マークを描いた。当初は約300人で人文字をつくる計画だったが、新型コロナウイルスの影響で取りやめに。企画に携わった土井芳伸さん(60)は「いろいろなアクシデントに見舞われたが、歓迎の気持ちを形にできてよかった。心に強く残る思い出になった」とかみしめるように話した。(了)(2019.9.4)
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