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世界12カ国のPCR検査事情を日本と比較してみた

柳沢有紀夫(豪在住/文筆家)

 新型コロナウイルス感染者の特定に有効と言われるPCR検査。日本では検査費用の自己負担がなく無料(1000~2000円程度の初診料・診察料などは除く)で受けられるのは、原則として「医師が必要と判断した場合」に限られる。

 希望者は症状がなくても費用を払えば民間の検査機関などで受けられるが、インターネット上の情報では検査料金1万~5万円という所が多いようだ。スポーツ選手や海外渡航者など、どうしても必要な人でない限り、手軽に受けようと思える金額ではないだろう。

 日本感染症学会によると、新型コロナウイルス感染症は、感染者の最大6割が無症状の可能性があるという。症状がないのに1万~5万円も自腹を切ってPCR検査を受ける人がどれだけいるのか分からないが、海外にいると「日本では感染者の半分以上が野放しになっている」と思えてしまう。日本の感染者が少ないように「見える」のも、「欧米などと比べてPCR検査率が低いからで、隠れ感染者が大勢いるはず」という指摘もあながち否定できない。

 では諸外国のPCR検査の実施率は実際どのくらいなのか? そしてその料金は?

 私が主宰する海外在住日本人ライターたちの集まり「海外書き人クラブ」のメンバーに依頼して、12カ国の感染状況や対策の現状などとともに調べてみた(かなり長い記事なので、お時間がない方はまず最終ページの「延べPCR検査実施率」一覧とまとめ部分からを読んでいただくのも手かもしれない)。

 最初に日本の状況をまとめておく。

【感染拡大状況】
・1日当たりの新規感染者数は3000~7000人台(2021年1月1~12日)(総人口は約1億2571万人)
・1月12日までの累計死亡者数は4145人
・人口1万人当たりの累計死亡者数は0.33人

【PCR検査に関して】
・無料でPCR検査が受けられるのは、原則として「医師が必要と判断した場合」
・1日当たりの検査数は21年1月1~12日で最大約7万6000件、12日間の平均で約4万7000件
・PCR検査の総実施件数は553万1305件で、延べ実施率はわずか4.4%(21年1月12日)
※新型コロナウイルスの新規感染者数、累計死亡者数、PCR検査数は厚生労働省の公表データ。総人口は総務省が公表した20年12月の推計値

 以下、海外の状況を見ていこう。記述については、「1日当たりの新規感染者数」は、特に断りがなければ、国外からの帰国者・入国者を除いた「市中感染者数」を示す。また、「1日当たり」はいずれも21年1月上旬の数字だ。

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