東京五輪で初めて実施されるスポーツクライミングの両エース、男子の楢崎智亜(24)=TEAM au=と女子の野口啓代(31)=同=が対談し、2021年の抱負と本番への思いを語った。新型コロナウイルスの影響で五輪が延期されても、ぶれることなく「目標は変わらず金メダル」と口をそろえる。初代の五輪王座に就くことで、競技をけん引してきた第一人者として「クライミングをメジャーに」とジュニア世代、子どもたちにアピールしたい―。そんな熱い思いも、揺るぎのない信念を支えている。(時事通信運動部 岩尾哲大)
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スポーツクライミングは3種目。「ボルダリング」は課題となる複数の壁を制限時間内にいくつ攻略できたかを争う。「スピード」は高さ15メートルの壁を登り切る速さを1対1で競う。「リード」は命綱を着けた状態で12メートル以上の壁を6分の制限時間内にどこまで登れるかで勝負する。東京五輪では3種目総合の「複合」でメダルが争われる。
―2020年はコロナ禍で出場できる大会が限られた。
野口 大会がなくなったのが4月のワールドカップ(W杯)から。最初はすごく不安だった。ずっと大会に出て調整してきたので、大会がないと、どこで自分の調子を測るか、バロメーターがないなと。
楢崎 僕も。特にボルダリングでよく思う。ボルダリングは勝敗にいろんな要素が絡んでくるので、大会に出ないと自分が伸ばしたところが正しかったのかどうかの確認もできないし、一番は周りのライバルたちと戦わないことでちょっと、わくわく感が薄くなった。
パワフルな要素も外せない
―海外勢が出場したW杯を見て気付いたことは。
楢崎 ボルダリングの課題のタイプは、パワフルな傾向が強くなったのかなと。ホールドの一つ一つが大きく、体全身で抱えるようなホールドがどんどん新しく出ているが、そういったものが増えている。これからも男子はパワフルな要素は外せないのかなと思う。徐々に、体が大きい選手が有利になっているのかなと思う部分もある。
―スピードのレベルアップは。
野口 公式の自己ベストより練習のタイムの方が全然速い。練習で出せているタイムを試合で出すのが一番の目標。
楢崎 スピードに関しては、ずっと量を登るトレーニングをしている。三つのパートに分けて、それぞれ一日何本と決めながらやっていた。基礎的な体力もついたし、ムーブの練度も上がって、タイム自体も5秒台が出るようになった。あとは、もうちょっと暖かい時期になって、もう一回各パートをしっかり高めていけば、5秒台中盤までいける感覚がある。
無敵のようで、伸びしろも
―ボルダリングはどうか。
楢崎 フォームを見直してきた。重心を下に残したまま動く課題が苦手で、体全身でどんどん進んでいく課題は得意。体を残しながら一手一手、スタティックに登る動きがまだ得意ではないので、そこを伸ばしたい思いで練習している。四肢をしっかり固めながら登ろうと。
―ボルダリングは2人とも世界トップクラス。野口選手から見て楢崎選手の成長は。
野口 (楢崎は)2019年はW杯の年間チャンピオンにもなって、世界選手権でも優勝して、複合でも1位。成績だけ見たら本当にボルダリングは無敵みたいなイメージがあるけど、それでもまだ穴があって伸びしろがあるというのが、単純にすごいと思う。今回のテーマは、苦手を克服する中で一番難しいものではないかと思う。自分の登りのスタイルをちょっと変えながら穴を埋めている。
楢崎 根本的な問題だよね。
野口 本当に最後に残った穴なのかなという気がする。だからきっと大変だろうなと、勝手に思う。
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