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DeNAの佐野恵太、背番号「7」に込めた新たな決意

プロの扉はドラフト9位

 2020年のプロ野球界で著しい進境を示した一人だ。DeNAの主将と4番打者を務めた佐野恵太選手(26)。米大リーグのレイズに移籍した筒香嘉智選手の穴を埋めるべく、前年までの控えから一転し、主役を任された。4番とはいえ、好機を広げたり着実に生かしたりする役割に徹底。打率3割2分8厘をマークし、レギュラー1年目で首位打者に輝いた。開幕して1カ月が過ぎてからシーズン1号が飛び出たが、最終的には20本塁打、69打点の好成績。21年は背番号を「44」から「7」に変更し、期待も重圧も、これまで以上に大きくなる。決意を新たに、さらなる飛躍を目指す。(時事通信運動部 寺門奈緒)

◇ ◇ ◇

 高校野球の名門、広陵高(広島)では甲子園に出場できなかったが、東京六大学の明大に進み、4年時の16年に中軸打者としてリーグ戦の春秋連覇に貢献。同期の柳裕也投手や星知弥投手らとともにプロ志望届を提出した。ドラフト当日、柳が中日1位、星がヤクルト2位と早々に指名された中、佐野の名前はなかなか呼ばれない。すると、セ・リーグ5球団、パ・リーグ3球団が「選択終了」とした9位で、DeNAが佐野を指名した。育成を除き、その日に指名を受けたのは87人(高校生35人、大学生33人、社会人19人)。大学生では最後の一人となって、プロの扉を開けた。

 長打力と勝負強さに定評があり、年を追うごとに出場機会が増加。主に代打の切り札として存在感を高めていった。3年目の19年は89試合に出場して59安打。シーズン終盤には4番にも座った。試合前の声出しを担うなど、持ち前の明るさでチームを盛り上げる一面も。雨で試合が中止になった際のファンサービスに、グラウンドで華麗なステップのダンスを披露したこともある。

異例の抜てき「筒香の後継」

 迎えたプロ4年目。異例の抜てきが待っていた。19年のオフに、チームの顔で主砲だった筒香がポスティングシステムを利用して大リーグへ。主将と「4番・左翼」のポストが空いた。就任5年目のラミレス監督は、筒香の後継に佐野を据えた。主将には実績のある他の選手も候補に挙がっていた中で、あえて任命した理由を「主将はセルフコントロールが非常に重要。コミュニケーションのスキルも大事で、佐野はコーチとも選手ともコミュニケーションが取れて、話がうまい」と説明。加えて、代打で結果を残してきたことで「自分をしっかりマネジメントしてやってきたというところを評価した」と語った。

 キャンプから4番・左翼で実戦を重ねた。オープン戦の序盤は不振だったが、最後は12球団トップの11打点で終えた。新型コロナウイルスの影響で本来の開幕は延期に。待ちに待った6月19日の開幕日。佐野は選手会長の石田健大投手らと話し合い、「心をひとつに」とプリントしたそろいのTシャツを用意した。チームの思いを一つにしながら、自身は「開幕4番」。勝負のシーズンが始まった。

つなぐ4番、月間MVPも

 初めてレギュラーで臨む心境を、こう話した。「プロに入ってから感じていないような緊張感があるが、それはいい経験ができているということ。力に変えていきたい。どれだけの数字が残せるかも楽しみ」。佐野の前後には18、19年と連続本塁打王のソト、パンチ力のある新外国人のオースティン、ベテランのロペスら強打者が並ぶ。「自分がつなげられれば、より強力な打線になる」。コンスタントに安打を重ね、「つなぎの4番」として役目を果たした。

 ただ、なかなか本塁打が出ない。待望の1号は7月22日のヤクルト戦(横浜)。肩の力が抜けたのか、そこから3試合連続でアーチをかけた。同じカードの翌日は2ラン。そして24日の広島戦(横浜)では九回、1点を追う1死満塁から逆転サヨナラ満塁本塁打を放った。8月は6本塁打、22打点と活躍。初の月間最優秀選手(MVP)を受賞した。

日々反省の繰り返し

 佐野は、こんな言葉をよく口にした。「しっかりと自分のスイングができるように」。ファーストストライクには迷わずフルスイングをする。左打者の佐野は左投手を苦手にしていたが、20年にはそれも克服。内外角を苦にせず、逆方向にも快打を飛ばす。そういう域に到達できた背景の一つに、日々その日を振り返り、反省し、課題を見いだすという地道な繰り返しがある。

 試合後、対戦した投手の特徴などをノートに書きとどめ、修正したい点や維持したい点があれば、暗くなったグラウンドで黙々とバットを振った。「毎日、昨日よりきょう、きょうよりあすと、野球がうまくなるようにやってきた」

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