全日本卓球選手権最終日(1月17日、丸善インテックアリーナ大阪)、東京五輪代表同士の対戦となった女子シングルス決勝は、石川佳純(27)=全農=が伊藤美誠(20)=スターツ=に4-3(4-11、11-7、7-11、7-11、12-10、11-5、11-9)で逆転勝ちして5年ぶり5度目の優勝を果たした。常に自分の卓球を変えることをいとわず、新しい技術に挑んできた努力の結実と言えるタイトル奪還だった。
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第4ゲームを終えて伊藤が3-1としたが、第5ゲームから石川のサービス得点や伊藤の攻撃ミスが出始め、ジュースで石川が踏ん張った。ここから流れが変わる。
石川がレシーブに回転や緩急、長短の変化をつけ、先手を取ろうとする伊藤の攻撃を微妙に狂わせる。ふわりとした一見甘いボールも、台の奥深くへ落とすと、伊藤のテンポではむしろ打ちづらい。
ラリーでは、前陣の高速ラリーなら伊藤も力をつけているが、やや台と距離を取れば、ドライブマンでしのぎもうまい石川が上。ただ、この試合はそれだけでなく、伊藤がわずかでも威力より確率を意識して入れてくれば、すかさず強打で返す激しさを見せた。
「第5ゲーム以降は、レシーブが弱気になると絶対勝てないと思ったし、チャレンジすることでしか結果は出せない。今までと違うレシーブ、違う攻撃ができました」
右と対戦することが多い左の選手は、ネットに向かって台の右寄りに立ち、フォアで右の選手のバックを攻めるフォアクロスを基本線にして育ってきた。だが、フォアドライブ頼みでは、中国などバックを振れる選手が多い世界では厳しい。16歳の時に2009年世界選手権横浜大会でベスト8に入った石川も、常に新しいことへの挑戦を迫られてきた。
若い頃は、手本があった。12年ロンドン五輪女子団体でともに銀メダルを獲得した平野早矢香は、寝食を忘れた努力で「国内仕様」の卓球を「国際仕様」に変えた。早熟な分だけ限界説も早かった福原愛は、バック中心からフォアを振る卓球に挑んで16年リオデジャネイロ五輪まで日本を引っ張った。
その2人がリオ五輪を挟んで相次ぎ引退。エースになった石川は、若手の急激な高速化やスマッシュ「復権」、チキータ「普及」の流れにさらされ、さらに大きな「変身」を迫られた。
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