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東京五輪成功へ「僕が言わなきゃ」 選手村の川淵三郎村長に聞く

観客がいない五輪は無意味

 来夏の東京五輪・パラリンピック開催時に、各国・地域の選手団の滞在拠点となる選手村(東京都中央区)で村長を務める川淵三郎さん(84)が時事通信のインタビューに応じた。Jリーグ初代チェアマンや日本サッカー協会、日本バスケットボール協会の会長など要職を務めてきたスポーツ界の重鎮。新型コロナウイルスの影響で不透明感が残る東京大会の開催に向けて前向きに、意欲的に語った。(時事通信運動部 山下昭人)

 ◇ ◇ ◇

 ―村長就任会見では「人生最後の大役」と表現した。大切にしたいことは。

 これまでと全く違った役割。選手、関係者の記憶に残る選手村にしたい気持ちがすごく強い。選手村は一番多い時、選手や関係者を含めて1万8000人が入る。それを支える関係者が何と8000人もいる。選手村のイメージそのものが村長になると思うので、自分なりに意識して、どっしり構えていい選手村をつくることにベストを尽くしたい。

 ―選手村の施設や機能について。

 最新の設備を持っている小さな病院みたいなものもある。コロナの感染者が出た場合にどう対応していくか、抜かりなくやるようなことができている。感染者ゼロが望ましいけど、分からないもんね。ある程度は出るものと覚悟して、出た時にどう対応するかということさえしっかりしておけば、選手も関係者も安心できると思う。最悪の場合でも、選手村全体に影響を与えないようなことはできていけると思っています。

 ―東京大会をめぐる現在の状況をどう見ているか。

 前から言っているんだけど、観客が一人もいない五輪を開催するなんて無意味だと思っているんだよね。そういう意味では海外から応援する人たちが来る場合にどのようにチェックするか、国民全体の心配事でもある。感染がどんどん増えていくんじゃないかと。ここでストップさせますよ、というようなものができれば海外の人も大歓迎できると思うんだけど、それって結構難しいと思うんだよね。
 可能な限り海外からの観客を入れるべきだと思うけども、最悪の場合は日本人だけの観客であってもいいじゃないかなと僕は思っている。今、サッカー、野球、相撲、バスケット、全部やっている。場合によって2万人近く入っていて、別に問題が起きていない。今の感じから言うと、そのまま五輪につなげることができるんじゃないかと思っている。
 世界が、これをきっかけにコロナに対する感覚が変わったんだっていう大会になるに違いないと僕は確信している。マスコミを含めてネガティブな雰囲気がまん延しているけど、いざ五輪がスタートしたら日本中が盛り上がる。そこは心配していない。

選手村の交流、大事なイベント

 ―各種世論調査では、東京大会開催に否定的な意見も多い。

 8割方が、消極的な意味での反対も含めて、開催は難しいとマスコミの調査で出ているよね。(国際オリンピック委員会の)バッハ会長が日本に来て、東京五輪を絶対開催すると言ったら前向きな姿勢に変わるかなと思ったらそうではなかったというのは、みんな意外だったんじゃないかなと思う。何が何でも東京五輪を成功させましょう、というような言論はゼロだからね。見たことがない。僕はそう言わなきゃならないな、という気持ちだよな。

 ―開会式参加人数の規模縮小が議論されていることへの見解は。

 簡素化の一つとして選手団の人数を少なくするというのも、一つの案として当然出てくると思うよね。選手の意向を十分聞いた上で。スポーツを通じてスポーツマンシップを養い、選手がお互いに理解し合う中で手と手をつなぎ合って世界平和に貢献する。力を合わせてやっていこうという場が五輪だというのは、五輪憲章に一番書かれていることでしょ。ということは、選手村での交流とか開閉会式の選手入場はそのための一番大事なイベントになるわけだよね。それを踏まえてどう判断するか。
 このコロナの時代の特別な考え方はあってしかるべきだと思う。予選ができない競技があったら五輪に参加することをやめておくとか。

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