短期的には改善傾向が見える日本の経済だが、長期的な視点での景気回復には、まだまだ課題が多過ぎる。報告書の中でも指摘されているが、たとえ失業率は低く抑えられていたとしても、健全な雇用状態が維持できているかといえば、決してそうとは言い切れない。
企業の業績の悪化に伴い、「非正規労働者の雇い止めや解雇などが次第に増加している」という。添付のグラフは独立行政法人「労働政策研究・研修機構」のHP(ホームページ)にアップされている「正規」と「非正規」の雇用者数の推移だ(資料3)。「非正規」が大幅に減少していることは一目瞭然で、「非正規労働者が優先的に解雇の対象となっていることを示唆している。近年の日本社会に燻っていた雇用の『分断』が、コロナ危機によって改めて表面化しつつある」との分析だ。
失業率が低く抑えられていても、全く安心はできない。なぜならパートで働いていた主婦やフリーター、高齢者が職を失い、その後、就職活動をせずに主婦なら専業主婦となったり、その他、親の世話になったり、貯金を切り崩す生活に入ったりした人が増えたとみられる。こうした人々は「非労働力人口」となって失業率には反映されないのだ。
失業率は、働く意欲のある労働力人口のうち、求職活動を行っていながら就職の機会がない人の割合だ。従って、2020年4~6月期に非労働力人口が、前年同期と比べて46万人増えて、4204万人になっても、失業者としてカウントされないことに、報告書は着目している。失業率に反映される失業者ではなくても、「実質的な失業者」の増加が、個人消費回復への足かせになることは確実であろう。
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