一方で、財政措置の効果は一定の時間的経過をもって表れてくるという点にも鑑み、財政支援の規模だけが、経済成長率の違いに結び付くと即断することは難しいという。
つまり「都市封鎖=ロックダウン」の厳格さや、各国の産業構造によっても、影響を受ける度合いに違いが生じてくるというわけだ。日本の場合は、緊急事態が宣言された期間でも、厳格な都市封鎖を行わない「ソフトロックダウン」だったことが、経済的ダメージを限定的にした原因であることも否定できない。
さらに、日本の金融機関が豊富な資金供給を行い、「企業に手元流動性資金が潤沢に供給された」ことも大きな支援となった。さらに、「その融資の裏付けとなる純資産として、いわゆる内部留保が企業側において豊富に存在したこと」も、内部留保をため込んできたことの是非は別として、この危機においてはプラスに作用したということだ。
こうした要素が絡み合って、実際に経済に関する指標も改善を見せ始めた。内閣府が発表している景気動向指数だが、景気の拡張・後退の大きさを表す8月の一致指数は、前月比1.1ポイント上昇した。これで3カ月連続のアップとなった(資料2)。
また、日銀が発表している「地域経済報告」、いわゆる「さくらリポート」でも、前回の7月までの景気判断は、全国九つの地域のうち全てで引き下げられていたが、10月は四国を除く8地域で引き上げられた。企業の設備投資や雇用などは懸念があるものの、「Go To キャンペーン」などの影響もあり、経済活動が徐々に再開され、景気が持ち直しつつあるという判断だ。
企業の倒産も、コロナ危機の影響で急増しているという状況ではない。また、失業率も日本では5月は2.9%、6月は2.8%、7月は2.9%となっており、G7の平均が8%前後で推移していることと比べれば、極めて低く抑えられている。
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