新型コロナウイルス禍が長期化する中、自分や家族のために健康を改めて意識する人が増えているようだ。4月以降、政府が呼び掛けてきた行動自粛はその後、段階的に緩和されたものの、依然として「3密」の回避はもちろん、ソーシャルディスタンスを意識した行動を取るなど「コロナ前」とは異なる社会生活が求められている。また、外出の機会が減って、運動不足になる人も増えてきた。このような生活が続く中で、いつも以上に健康に気を使うようになったという人が一定数いることは想像に難くない。実は、こうした生活や行動の変化は、スマートフォンのヘルスケアアプリの利用動向から読み取ることができる。
そこで今回、ダイエットや健康管理のサポートをするアプリ「あすけん」を開発運営するasken(東京都新宿区)と、同アプリを栄養指導の中で活用する東京大学附属病院病態栄養治療部に話を聞いた。
2020年4月の緊急事態宣言の発令後に、ニュース番組やSNSで「コロナ太り」という言葉を頻繁に見聞きした人も多いだろう。家に閉じこもりがちなことで起こる運動不足や、在宅中の食べ過ぎなどを原因とする肥満を表す言葉として使われているが、この言葉の登場を見ても、ダイエットへの関心が高まっていたことが分かる。
会員登録者数が470万(ユーザーの男女比は21:79、20年10月4日時点)を超えるというアプリ「あすけん」(Android版、i-Phone版/PC版)を提供するaskenによると、新型コロナ関連のニュースが頻繁に取り上げられるようになった今年2月以降、同アプリのダウンロード数やアプリ利用者のログイン状況には、例年よりも増加傾向が見られていたという。
同社の広報担当で栄養士の多田綾子さんは「例年、2月以降はダウンロード数が落ち込む傾向にありましたが、2月~4月末のダウンロード数は昨年と比べ5%増、4月は7%増でした。また、4月9日の時点で、30日連続でログインしたユーザー数は前年と比べ2.6倍増になっています」と語る。
その原因を「新型コロナ感染拡大防止対策の影響で、通勤・通学時間がなくなった方が、自分のために使える時間が増えたこと、そしていわゆる『在宅太り』の二つの側面からの需要があったのではないか」と分析した。
アプリ「あすけん」の主な機能は、1日の食事内容を正確に記録できることだ。アプリ内に栄養価が登録された食品には、肉、野菜、調味料などの食材に加え、一般的な料理や市販品のほか外食メニューもある。アプリ利用者は、この食品のデータから、自分が食べた品目を選択して入力、記録することで、食事の摂取カロリーを含む14種類の栄養素の摂取量がグラフ化され、表示される仕組みになっている。14種類の栄養素は、3大栄養素、代謝に必要な栄養素に、不足しがちな栄養素をピックアップした。さらにこのアプリでは、「AI管理栄養士」のキャラクター「未来(みき)」が登場し、食事記録を基にカロリーと栄養分布を評価した上で、1日の食事の評価点数を出し、食生活の改善点をアドバイスしてくれる。利用者は自らの食事を記録して顧みることで、適切な栄養バランスの食事を心掛け、結果的に減量や健康維持につなげていくことができる。なお、アプリの基本的な機能は無料で利用できるが、有料版には食品の画像解析など高度な機能が備えられている。
アプリ「あすけん」は、08年から始めたPCや携帯電話での食事記録と栄養評価ができるサービスをスマホ用に改良し、13年から提供を開始した。食品の登録は、約12年間で利用者の食事動向に基づきながらその件数を増やし、現在は10万件以上の食材や食品の栄養価が登録されているという。なお、アプリ利用者はPCからログインして食事記録をすることも可能となっている。
また同社には、現在管理栄養士・栄養士合わせて約20人が所属し、利用者の食事内容を見ながら、AI管理栄養士のアドバイスの言葉の原案を検討するなど、利用者の健康管理へのモチベーションを維持できるよう工夫している。
同社執行役員で管理栄養士の道江美貴子さんは「新型コロナについては、未知の部分もまだ多くあるものの、基礎疾患や肥満の方が重症化しやすいというデータも出ています。今回のような感染症の世界的な流行を見て、重症化を防ぐために、食生活をサポートすることは社会的にも意義あることだと改めて感じています」と語る。
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