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コロナ禍の米国で子どもたちが失うもの 年内休校のシアトル現地リポート

ハントシンガー典子(文筆家)

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、米国でトランプ大統領が緊急事態宣言を出したのは、日本の約1カ月前に当たる2020年3月13日。シアトルのあるワシントン州ではそれより早い2月29日、米国で初めて感染による死者が同地で出たとの発表とともに知事が緊急事態宣言を発し、州政府機関に感染拡大に備えるよう命じた。同じタイミングでシアトル近郊の長期療養施設内でクラスターが発生したことも発表され、シアトルの人々にとっては遠い中国での出来事という認識が一気に身近に迫った瞬間だった。

 西海岸にあるシアトルは世界的に有名なIT企業が集まる都市として知られる。それぞれ数万人単位の社員を抱えるマイクロソフトとアマゾン・ドット・コムの本社があり、コロナ禍でのオンライン生活移行でIT企業はむしろ仕事が増えて活気が出ているくらいだ。感染拡大を受け、IT企業各社は3月に入ってテレワーク移行を即決。その他多くの関連企業も追随した。今や「アマゾン・タウン」とも言えるシアトル中心のビジネス街から一気に人が消えた。ただし、この頃はシアトル学区の公立校では教室での授業を続けており、子どもたちの日常は続いていた。ハイテク企業以外の仕事に就く人々の通勤している割合も高く、まだまだ危機感は薄かった。

 3月11日、その日の朝も子どもたちは普通に学校で授業を受けていた。やがて、先生たちから衝撃のひと言を耳にすることになる。

 「あすから学校が閉鎖されることになりました」

 シアトルを含むキング郡で234人、ワシントン州全体では366人の感染者が発表されていたその日、子どもたちの当たり前だった学校生活が突然途絶えた。教員、児童、親、全員にとって寝耳に水の出来事。筆者の8歳になる息子は、泣いて訴えた。

 「あすの料理教室はどうなるの? もうできないの?」

 放課後の料理教室でアイデアが採用され、その日に作る献立が決まったと、うれしそうに話していた息子。ずっと楽しみにしていたのに、案の定、しばらくして今学期の料理教室の中止、そして既に支払い済みの経費は返金しないと知らせるメールが届いた。その他のおけいこ事もリアルでは一切なくなり、やがてオンラインに移行。公園の遊具から娯楽施設まで、あらゆるアクティビティーが子どもたちの日常から消えうせた。集会やイベントの制限により、友だちと気軽に遊ぶこともかなわない。買い物やレストランにも行けない。会える生身の人間は家族だけという、SF映画さながらの世にも奇妙なウィズコロナの現実に突入していく。

 しかしこの時点では、学校に行けない状態が半年以上も続くとは、誰も考えていなかった。

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