全米に8校しかないアイビー・リーグの名門ハーバード大はアイスホッケー女子も強い。全米大学体育協会(NCAA)1部の選手権で準優勝4度。そこで、佐野月咲(るなさ)はもがく。
5年前の冬、U18日本代表から外された。フル代表、五輪への道を絶たれたと打ちひしがれ、日本では傍流の東京で競技を続ける厳しさも感じていた。17歳の高校生にとっては小さくない挫折で「ホッケー、終わったなと。誇れるものがないと落ち込んだ」と振り返る。東大志望から一転、ハーバード大へ。アイスホッケーへの望みを懸け、はい上がるために選んだリンクだった。
ボストン近郊の学術都市ケンブリッジで3年間をこれまで過ごした。25人前後の精鋭が集うチームは米国やカナダのU18代表らを特待生として迎え、プロリーグのNWHLにも送り込む。「スピードが速くて力強い。シュートやバトル、得点と勝負への執着心が強く、米国で1、2番になりたい人と毎日やっている感じ」という環境でもまれ、通算91試合で1ゴール。壁も感じる。
プレースタイルに行き詰まり
佐野は特待生として入っていない。アイビー・リーグの大学をいくつか回る中でハーバードだけは当初コーチにも会えず、しばらくしてようやく一斉メールを受け取り、高3の夏休みに高校生キャンプへ。特待生の枠は埋まっているとコーチから告げられたが、「自力で入ったらプレーさせてくれるか」と食い下がると、入学選考でプッシュするから出願するよう背中を押してくれた。
いわゆる一般入部の扱いで、アイビー・リーグでも唯一の日本人。運動量の多いアイスホッケーはGKを除く5人をセットにして順に回す中で、最後の4セット目に入れられることが多い。「圧倒的に超えないと使ってもらえない。そう思うことが何度もあった」と言葉を絞り出した。
ヘッドコーチのケーティー・ストーンはソチ五輪で米国代表を銀メダルに導き、ハーバードでも25年間で494勝を挙げて13人の五輪代表を輩出した名将。選手がチームに与える意味を一人一人に伝える教育者でもある。佐野はひたむきさの模範とされ、「がつがつ走ってパックを取りにいくプレーが得意で、そこは評価されていた」と思う。一方で行き詰まりも感じていた。
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