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パリジェンヌのファッションは中古衣料で 環境意識の向上とコロナが加速

羽生のり子(ジャーナリスト/仏在住)

意外にモノを買わないパリジェンヌ
 日本でもその他の国でもパリジェンヌはおしゃれのお手本のように思われている。サンジェルマン・デプレに立ち並ぶブティックや、その界隈(かいわい)を歩くファッショニスタを見ると確かにうなずける。ただ、普通のパリジェンヌは意外に物を買わない。特に近年は、買っても中古品である場合が多い。

 パリジェンヌにも蚤(のみ)の市やガレージセールで中古品を買う習慣はあったが、ブームが盛り上がったのは2008年のリーマン・ショックの時だ。当時は経済的な理由で中古品を買う人が多かったが、一時的なブームにとどまらず、いまだに続いている。今年またブームが盛り上がった原因の一つは、新型コロナウイルスで収入が不安定になったことだ。それに加えて、近年は環境意識が高まり、使い捨てはよくないと思う人が増えたことも大きい。

 中古品ブームは車、家具、電気製品など消費財全般に及んでいる。中でも顕著なのが中古衣料だ。

 これまで、低価格で衣料品を提供するファストファッションが大量消費を促し、安く買い、簡単に捨てることが当たり前になっていた。しかも、ゴミ箱行きの衣料は、ファストファッションに限らなかった。18年、英高級衣料大手バーバリーが前年に42億円相当の売れ残り商品を焼却処分にしていたことが分かり、消費者が不買運動を起こした。バーバリーはそれ以降、焼却処分をやめると宣言したが、この件がきっかけで、同社に限らずファッション業界に売れ残った在庫を廃棄処分する習慣があることが明らかになった。

 縫製工場の従業員の人権が守られていなかったり、アンゴラヤギのようにその毛が衣料に使われる動物が過酷な扱いを受けていたりすることもメディアで報道され、衣料の購入時にそのような企業を避ける人々が増えてきた。

 環境と社会的責任を重視して買う考えは、フランスで外出禁止が解除された後の20年5月20~21日に、楽天が調査会社「オピニオン・ウェイ」に依頼して実施した調査結果にも表れている。18歳以上のフランス人1088人に、外出禁止の前と後の買い物の仕方の違いを尋ねた。70%が「前より社会的に責任のある買い方をしたい」、74%が「新品を買わなくてもよい」と答えた。新品でなくてもよい物の1位はDVDや本などの文化商品、2位が家具など家のための商品、3位が衣料だった。

 中古品を買う理由は1位が「節約のため」で60%、2位が「環境のため」で43%、3位が楽しみのためで12%だった。新品でなくてもよいと答えたのは女性40%、男性25%、女性の方が多い。調査対象者の半数が、ここ1年間に中古品を買ったことがあると答えており、中古品に対する抵抗感はないようだ。

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