8月29日、陸上のトップ選手が集まって福井県営陸上競技場で行われた「ナイトゲームズ・イン福井」は、今年も好記録が続出した。昨年の第1回大会では日本記録が3種目で計四つも誕生。今年は日本記録こそ出なかったものの、女子100メートル障害決勝で追い風参考記録ながら2人が日本記録を上回り、男子100メートル決勝はケンブリッジ飛鳥(ナイキ)が日本歴代7位に並ぶ10秒03で優勝した。「モンスタースタジアム」と呼ばれるゆえんの強い追い風と、新型コロナウイルスの感染防止策を講じながら会場を盛り上げる独自の演出が選手を力強く後押しした。(時事通信運動部 青木貴紀)
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今や日本で最も好記録が生まれる競技会と言えるかもしれない。競技場の愛称は「9.98スタジアム」。2017年9月9日、当時東洋大4年だった桐生祥秀(日本生命)が男子100メートルで、日本人初の9秒台となる9秒98の日本新記録(当時)を樹立したことにちなんで付けられたものだ。このレースも追い風1.8メートルと絶好の条件下で行われ、快挙を「アシスト」した。
200メートルまでの短距離や障害種目、走り幅跳びなどは追い風が2.0メートルを超えると参考記録となる。この競技場も以前は「追い参」となることが多かったが、18年の福井国体に向けて17年に大型スクリーンを設置すると、風の流れが変わったのか、公認範囲内に収まることが増えたという。
昨年の大会は、男子走り幅跳びで橋岡優輝(日大)が8メートル32を跳び、27年ぶりに日本記録(8メートル25)を更新。わずか数十分後には、城山正太郎(ゼンリン)が8メートル40のビッグジャンプを見せて塗り替えた。さらに、男子110メートル障害の高山峻野(ゼンリン)も13秒25の日本新をたたき出し、女子100メートル障害の寺田明日香(パソナグループ)は13秒00の日本タイ記録(当時)をマーク。全て追い風1.1~1.6メートルの絶妙な風だった。
予選から好タイム、会場に期待感
名物の追い風は、今年も「健在」。予選から好記録が続々飛び出した。招待種目で最初のトラックレースとなった女子100メートル障害予選で、寺田が自身の日本記録(12秒97)を上回る12秒92をマークすると、場内がどっと沸いた。追い風2.3メートルで惜しくも参考記録だったが、会場は一気に「今年も日本記録が生まれるかもしれない」という雰囲気に変わった。
主要種目の決勝は日が陰り始めた午後6時すぎからスタートした。一発目は女子100メートル障害。追い風2.1メートルと、わずかに公認範囲を超えてしまったが、青木益未(七十七銀行)が12秒87、寺田が12秒93。参考記録とはいえ2人が12秒台を出すという国内で史上最高レベルのレースとなった。
クライマックスは男子100メートル
続く男子110メートル障害は、今季好調の金井大旺(ミズノ)がトップで駆け抜け、ゴール脇のタイマーは日本記録と同じ13秒25で止まった。会場中が固唾をのんで見守る中、約30秒後に表示された公式記録は13秒27(追い風1.4メートル)。惜しくも日本新とはならなかったが、予選の13秒33から2本続けて日本歴代2位の好タイムを刻んだ。
最終種目はメインイベントの男子100メートル決勝。暗くなったスタジアムは照明がともり、9秒台への期待が高まる。ケンブリッジと桐生が激しく競り合ったレースは追い風1.0メートルの好条件下、ケンブリッジが10秒03で優勝。予選で出した3年ぶりの自己記録を、さらに0秒02縮めた。桐生も10秒06の好タイムだった。
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