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「足」も多彩に、もっと自由に 伊藤美誠に聞く

「自己開放」の続きが始まる

 普段から、映像で他の選手同士の試合はよく見ても、自分の試合はあまり見る方ではないという。一流選手になるほど、試合が終わると間もなく、自分の頭の中でどこがどうだったか分析ができていることが多い。1対1の個人競技では特にそうだ。

 だが、この期間中は別の発見があった。「半年も前の映像なので、見ると足の使い方がどれだけ良くなったとか、分かって面白い」。試合で練習の成果や成長の度合いを試せない代わりに、過去の自分を見ることで今との違いを確認できた。

 8カ月ぶりの実戦は、まだコロナ前の状況には遠い環境で始まる。中国への入国後は大会までに待機期間が設けられそうだ。国内大会も来年1月の全日本選手権(大阪)は無観客で、ダブルスは行わない。観客との一体感で乗っていくタイプ。「(観客に)いてほしいのは絶対ですが、シーンとしていても自分を高められるようにしたい」とイメージを描く。

 そして伊藤にとっては、コロナ禍の前につかみかけたことの続きを、追求する場でもある。2月にドイツ・オープンから帰国した後、完璧を求め過ぎている自分に気づいた心境を明かした。結果が良くても納得できず、多彩なはずの技の選択肢を縛っていることもあった。「もっと自分を自由にさせてあげたい」

 次のハンガリー・オープンで優勝。カタール・オープンも準決勝で丁寧に快勝するなど「自己開放」の境地が見えかけた試合だった。そこへ起きたコロナ禍。その後に強化した足の使い方にしても、「もちろんこれが一番いいというのはありますが、ぐちゃぐちゃになっても取れれば、その自分を許せるというか」。試合で使った結果を幅広く受け止めることを意識して、取り組んできた。

 「自分を開放させて、練習してきたことを自由に出せるように試合したいなと思います。めっちゃ楽しみ」。実戦再開は、レベルアップした「自己開放」の再開でもある。(時事通信社・若林哲治)(2020.9.29)

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