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識者が語る東京五輪の在り方 「オリンピックたるゆえん、大事に」「選手の発表機会を」

山口香さん「アスリートの思い、くみ取って」

 「オリンピックは2週間で33競技やらないといけない大きな船。舵取りが難しくて急に方向転換できないのがリスクになってしまっている。オリンピックを取り巻く人たちが非常に増えているので、どういう方向に向かうのか、意思統一するのはなかなか難しいと思います」

 「今準備している多くの国のアスリートのために、機会を設けるという感覚はあっていいと思う。その観点から可能性を探っていけばやれる気はしますよね。いろんな人に我慢を強いるし、今までの形とは全く違う。いろんなものを省いてアスリートのためだけにやらせてください、その方が説得力があるような気がする。それこそ観客がゼロでも。アスリートが準備してきたことは真実。彼らが積み重ねてきた努力はうそじゃない。その発表の機会を奪わないでほしい、その一点だったら」

 「多くの人たちはアスリートを応援したい気持ちを持っていただいているはずなんですよ。10年、20年準備してきた選手たちもいるんだと。その思いをくみとってやらせていただけないか、そこに訴えるのが正しい形じゃないか。皆さんの希望も背負うなんておこがましいと思う。結果的に、見た人が『やってよかったね』『選手たちの頑張りが心に響いたよ』と言ってくれたらそれはありがたいですよ。順序を間違えない方がいい」

 「例えば音楽、絵、映画、そういったものが世の中からなくなっていいと思っている人はいないと思います。好き嫌いは別にして。多分スポーツも同じだと思う。でもスポーツとオリンピックは違うじゃないですか。だから、これがなくては駄目だよねという理由が必要ってことなんですよ。オリンピックは素晴らしい、あって当然というものではなくて、本当に必要なのかという問いからスタートしないと。そういった原点を考える機会になったらいいなと思います」

 「東京の人以上に(2024年五輪開催地の)パリ、(28年開催地の)ロサンゼルスの人たちも考えると思う。逆に言うと、日本の舵取りも今後にすごく大きな影響を及ぼす。安直にやめるというのもリスクを示すことになるから影響を及ぼすし、安直にやるということもそう。日本にはオリンピックの未来への責任がある」

◇ ◇ ◇

 山口 香(やまぐち・かおり) 1964年、東京都生まれ。小学1年から柔道を始め、全日本女子体重別選手権大会で10連覇。84年世界選手権52キロ級で金メダル、公開競技だった88年ソウル五輪では銅メダルを獲得し、「女三四郎」と呼ばれた。現役引退後は全日本柔道連盟女子強化コーチなどを務め、現在は筑波大体育系教授やJOC理事などとして活躍中。(2020年8月16日掲載)

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