新型コロナウイルス感染拡大の影響で、旅行や散策がままならない日々が続いている。筆者のような寺社仏閣・お参り好きは、以前のように気軽に外出できる日々が訪れることを願わずにはいられない。ところで、こういったわれわれが日々抱く「願い」。神社やお寺の中には、合格祈願や健康祈願といったオーソドックスな願いとは一味違ったご利益があるとされるところや、不思議な祈願法のところがある。ユニークな祈願の社寺とその由来から、お参り気分を楽しんでいただきたい。
ダジャレで言霊を発動
埼玉県越谷市に鎮座する久伊豆(ひさいず)神社は創建が平安時代以前にさかのぼる古社であるが、「クイズに強くなる」という、神社にしては意外なご神徳(ご利益)があるとされる。
なぜか。すでにお気付きの方もいることと思うが「久伊豆」が「クイズ」とも読めるという単純な理由からだ。読み方はもちろん、かつてクイズ番組のロケが行われたということも、その名を高める一因となっている。
一方、埼玉県東松山市の箭弓(やきゅう)稲荷神社は、全国の球児からの信仰を集めている。「箭弓」は弓矢を意味するが、読みが「野球」に通じることに加え、もともと勝負の神様としての信仰があったことから野球上達の神社として有名になった。
「なんだ、これもただのダジャレか…」と思ってはいけない。日本では、『古事記』『日本書紀』の時代から言葉には霊力が宿っていると信じ、これを言霊(ことだま)として信仰してきた。発音が似ているものには類似した性質が宿り、その力が人間にも及ぶと考えられてきたのである。
例えば、結婚式で「わかれる」「きれる」「はなれる」といった言葉(音)を忌むのも、言霊信仰に基づくものだ。21世紀の今もこうした習俗が生きているということは、日本人の精神風土に根ざしたものであり、なんらかの根拠があるはずなのだ。
社寺のご利益・ご神徳を見ていくと、このようにダジャレのような由来のものは少なくない。
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